本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
J.R.R.トールキン『指輪物語』(評論社)
全 9 巻の新版文庫で再読。瀬田貞二さんの翻訳に田中明子さんが手を入れた新しいバージョンです。「新版」の翻訳で「指輪」を読むのは、実はこれが初めて。まあ、旧版もそんなしっかりとは読み込んでないので、どこがどう変わったのかなんて、ほとんど分からないんですが。固有名詞でちょこちょこっと気付くくらいかな。

その後、追補編が入っていなかったので、ここのみ英文で再読しました。『指輪物語』については、あまりにも思い入れが強くて、とてもここに載せられるような短い感想文なんかにはまとまりません。読み返すたびに、没入してしまう。

ちなみに、賛否両論の(というか、オールド・ファンには基本的に支持されている)瀬田訳における本文の「です・ます体」について。正直言って、私も子供の頃、初めて和訳版を見たときには「えーっ、です・ます調? 意外!」と思ったクチでした。だけど、普通に読んでたら思ったほど気にならないですね。

そもそも、内容に引き込まれてしまって、脳裏で直接イメージ化しちゃってるので、文体が「です・ます」であること自体、そんな意識してないかも。また、敢えて意識して読んでみても、これはこれで良いなあと思うようになりました。なんというか「伝承文学」っぽくて。前回読んだときの記憶からは抹消されてたんだけど、これ序文とか第 1 部から第 2 部に移るときの説明文とかは、「である」体だったんですね。それで本編のほうは「物語られているもの」として「です・ます」で対比されてるんだ。なるほど。そう思って読むと、なんかこう「ぞくぞくっ」と来るかっこよさがある。なにより、やはり瀬田さんの訳って、「きれい」ですね。おそらく、初めから日本語で入っちゃったら、私にとってもこれが決定版になっただろう。現に C. S. ルイスの「ナルニア」シリーズは、大人になってから英語で読んでみても、脳裏に子供の頃読んでた瀬田訳が浮かんできたもの。

結局は「どっちを先に読んだか」の問題に過ぎないのかなあ。「指輪」の場合は、英語で読んでたときは「です・ます」の印象なかったから。それと、日本語読んでても、どうしても頭の中で英語がダブってしまう箇所があって。特に詩歌の部分は、先に英語版でリズムが入っちゃってるので。自分でも驚いたけど。刷り込みって恐ろしいわ。あまりにも脳裏に英語のリズムがフラッシュバックするようなら途中から英語版に切り替えようかなあと一時は迷ったくらい。でもとにかく一度は、最後まで日本語で読んでみることにします。和訳版も、今読むと「わ、かっこえー」と思う部分が多いっす。

多分なあ、英語版の "The Lord of the Rings" の場合は、作品そのもの以外に、私の中で「付属物」的な思い入れが多いんですよ。こんなに長い物語をまったく大人のサポートを受けずに読んだのは初めてだったのですごい達成感があったとか。最初は図書館で借りて読んで、どうしても自分用にも欲しくて、親にねだってねだって一揃い買ってもらったとか(自分のお小遣いで買える額ではありませんでした)。真夜中になっても途中で止められなくて、親に取り上げられて、それでも我慢できなくてこっそり本と懐中電灯を部屋に持ち込んでベッドの中で布団かぶって読んでるの見つかってまた叱られたとか。通っていた教会の司祭さんが「おっ、こんなの読んでるのか」と嬉しそうな顔をしてくれたとか。小学校で、担任の先生がおすすめ本を置くクラスの本棚に "The Hobbit" が入っていたことに、ずっと後になって気付いたとか。そういうの全部ひっくるめて、私の中で「とくべつ」なんですよ。

日本に帰ってからは、「トールキン読んでます」という人に出会うまでに、長い長い年月(子供の感覚ではね)を待たねばならなかったし。日本で熱く語れる友達が身近にいたら、和訳版ももっと読み込んだかなあ。

原書:J. R. R. Tolkien "The Lord of the Rings" 1966(初版 1954-1955)

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット
文庫 新版 指輪物語 全10巻セット
〔瀬田貞二,田中明子・訳/文庫新版1992年/親本:瀬田貞二・訳,1972〜1975年〕
※2003年に追補編の文庫版も出て全10巻になりました。
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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