本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
清水義範『清水義範の作文教室』(ハヤカワ文庫JA)
著名な小説家であるところの清水義範さんが、弟さんの経営する塾に通う小学生の皆さんを相手に「作文教室」を開講。本書では、とりわけ個性あるメンバーが揃っていたある 1 年の作品と添削内容が紹介されている。

これ、ものすごく面白かった。才気走るあまり暴走レベルまで行っちゃう子、淡々と観察眼を働かせる子、シニカルな目で大人を見つめる子、とにかくゴーイング・マイ・ウェイな子……。うわぁ、うわぁ、子供の作文って実は面白かったのね。

特徴的なのが、伝えたいことを伝えるノウハウの伝授が重視され、作文内容の道徳的な良し悪しを判定しない「何を書いてもいいんだよ」という指導が行われている点。これ言われてみれば「書き方」を教える授業としては大変マトモな方針だと思うんだが、たしかに学校で書かされる作文って、「良い子の意見」でまとめないといけないような強迫観念があったよなあ。

また「東京先生」こと清水義範さんの、どんな作文が手元に届いても決して否定的なコメントを付けず、まずはホメどころを探した上で「こんなふうにすれば、もっと意図どおりの効果が得られると思うよ?」というかんじで赤を入れているのが、なんだかすごく「ほっ」とする。いいなあ、こういう先生。

それでですね。私、正直言って、自分の感情の動き方がまだ自分でもよく分かっていないのだが、どういうわけだかこの本読んでる間に、何度も目の奥がつーんとして泣きそうになっちゃったんだよ。すっごく楽しいのに。何がそんなに、琴線に触れたのだろうか。

育ちざかりの子供たちが、最初は「何を書けばよいのやら」という状態からそろそろと作文を書き始め、1 年のうちにどんどん個性に沿った文章を書くようになっていくさま? その個性が「東京先生」という良きオブザーバのもとで、決して撓められることなく健やかに発現していくさま? たとえば「感情がないのでは」とまで案じられていた女の子が最後に書いた「春」についての作文。大人たちから要求された感情表現ではなく、むしろ観察眼の豊かさで先生を驚かせる文章は、たしかにあまりにも感動的だ。

それとも泣きそうになったのは、作文を書くという行為そのものが、自分の子供時代の経験とオーバーラップしたせいなのだろうか? うーん、それだけじゃないような。まだ何かあるような。とにかく、泣きそうになったんだよ。

清水義範の作文教室 (ハヤカワ文庫JA)
清水義範の作文教室
〔1999年/親本1995年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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