本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
梨木香歩『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)
前に読んだ『裏庭』(新潮文庫)が面白かったので、これも文庫化するなりゲット。中学入学後まもなく登校拒否になってしまった主人公のまいは、親元を離れて在日英国人である母方の祖母のところに預けられる。「魔女」を自称するおばあちゃんの元で魔女修行をすることになったが、修行のための基礎トレーニングとはすなわち、まず精神力を高め自分を律する規則正しい生活を送ることなのだった。

まいとおばあちゃんの穏やかでありながらも背筋の伸びた、手製のジャムや摘みたてのハーブの香りが漂う生活ぶりの描写がすごくよい。健全な精神って、こういうところを土台にして育つんだろうなあと思わせる、基本に忠実な暮らし。私が一番気に入ったのは、洗い立てのシーツをラベンダー畑の上に広げて乾かすシーン。ああ、うっとり。

ただ、自分を省みると、多分この作品の登場人物の中で最も私に近いのは、まいの母親だろうと思う。家庭を持っても、それを守ることには専念できない、キャリア志向のママ。おばあちゃんの考え方とは相容れない生き方をしか選べない、まいのママ。物語自体はひたすらまい中心に進んでいるんだけど、それでもママとおばあちゃんのやりとりは、かなり切ない。

この文庫版には、表題作のほかに「渡りの一日」という短編が収められていて、ネット上ではこれが本編と雰囲気が違いすぎるので入れてほしくなかったという意見をいくつか見たけれど、個人的には、この短編が入っていて良かったと思う。なぜならこの短編において、まいは初めて、「色んな生き方をする女の人がいていいんだ」という発見を明確に自分の中で言語化するからだ。「西の魔女」であったおばあちゃんの弟子として豊かな生活力を身につけた彼女であっても、違う生き方をする自分の母親の存在を認めることができているのだ、というところまではっきり書いてもらわないと、心の狭い私は多分、本編を抵抗なく受け入れることができなかっただろう。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
〔2001年/親本1994年, 楡出版〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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