2001.04.12 Thursday
乙武洋匡『五体不満足 完全版』(講談社文庫)
数年前のベストセラーに、その後のことを少し加筆したもの。親本が出た当時は、自分のサイトの掲示板でもちらっと話題に上ったにもかかわらず、読みそびれてしまっていた。そのときの掲示板では、ご自身も障碍者でいらっしゃる方が、どうしても「乙武さんは恵まれているのだ」と感じてしまう……というような発言をされていたように思う。
その辺の問題は、著者本人も承知していたようで、今回の加筆部分では、インタビュー等において「僕は」という主語で発言した内容が「障害者は」と一般化した文脈に置き換えられて報道されてしまったことに対する当惑、などが綴られていた。親本では、胴体だけの体が車椅子に乗っかっている衝撃的な写真を表紙に持ってきていたのが、この文庫版で乙武氏のことを知らなければどうということもない顔写真のみの表紙になっているのは、そういった嫌な経験が反映されているのだろうか?
本の中身は、全体的にとても読みやすく、特に前半部分の話の進め方など、とても巧い。そしてなんというか、本当に「ちょっと文章に自信のある普通の大学生」、という文体になっていて、それがこの本の場合は一層、効果を上げている。
確かに、この著者は“恵まれている”のかもしれない。前向きで賢明な父母に恵まれ、教師に恵まれ、才に恵まれ、経済的に恵まれ、身体上のハンディを受け入れて明るく強く生きて来られた 20 年あまりの人生。けどそれは、誰もがどこかで、他の誰かに対して持っているごく普通の「優位性」と同じこと、だと言いたいのだろうなあ、この人は。そしてそれは多分、正しい。
スポーツライターとして働き始めたときに「個性のない文章」と評されて喜んだ、というくだりは、ものすごく共感しました。私もどっちかというと、仕事で使う文章については、そういう考え方をするタイプ。
色んな意味で「若さ」を感じた 1 冊でした。

五体不満足―完全版 (講談社文庫)
〔2001年/親本1998年,『五体不満足』〕
その辺の問題は、著者本人も承知していたようで、今回の加筆部分では、インタビュー等において「僕は」という主語で発言した内容が「障害者は」と一般化した文脈に置き換えられて報道されてしまったことに対する当惑、などが綴られていた。親本では、胴体だけの体が車椅子に乗っかっている衝撃的な写真を表紙に持ってきていたのが、この文庫版で乙武氏のことを知らなければどうということもない顔写真のみの表紙になっているのは、そういった嫌な経験が反映されているのだろうか?
本の中身は、全体的にとても読みやすく、特に前半部分の話の進め方など、とても巧い。そしてなんというか、本当に「ちょっと文章に自信のある普通の大学生」、という文体になっていて、それがこの本の場合は一層、効果を上げている。
確かに、この著者は“恵まれている”のかもしれない。前向きで賢明な父母に恵まれ、教師に恵まれ、才に恵まれ、経済的に恵まれ、身体上のハンディを受け入れて明るく強く生きて来られた 20 年あまりの人生。けどそれは、誰もがどこかで、他の誰かに対して持っているごく普通の「優位性」と同じこと、だと言いたいのだろうなあ、この人は。そしてそれは多分、正しい。
スポーツライターとして働き始めたときに「個性のない文章」と評されて喜んだ、というくだりは、ものすごく共感しました。私もどっちかというと、仕事で使う文章については、そういう考え方をするタイプ。
色んな意味で「若さ」を感じた 1 冊でした。

五体不満足―完全版 (講談社文庫)
〔2001年/親本1998年,『五体不満足』〕