本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
久美沙織『ドラゴンファームはいつもにぎやか』/『ドラゴンファームのゆかいな仲間(上・下)』/『ドラゴンファームの子どもたち(上・下)』(プランニングハウス ファンタジーの森)
なんと言いますか。度肝を抜かれました、はい。目からウロコぽろぽろ。

こういうの、アリなんだなって。とにかく最初に、固有名詞の「ごった煮」度に圧倒されてしまって。英語ありドイツ語あり、日本語のダジャレあり。最終巻に至っては、モロ英語のスペリングが「古代語」としてそのまま出てくる。大体にして、竜使いの一族が「ペンドラゴン」だぞっ。あ、nowhere の逆さ綴りでエレホンっていうのも、別の小説(なんだっけ?)のネタだし。竜レースのルールって、ほとんど現実世界の競馬だよなー。

異世界ファンタジーはまず言語の創造が基本、と思っているトールキン原理主義者は、思いっきり混乱したまま、ここで一旦挫折します。ペンドラゴン=アーサー王伝説という図式が染み付いている史学科出身石頭読者は、これで一旦メゲます。その他もろもろ、脱力しまくって、本を置いてしまいます。

ところが。気を取りなおしてちゃんとしっかり読んでみると、これがなかなか面白い。つまりここは、ごちゃまぜな文化の中で生きている私たちのこちら側の現代世界と、直接つながっているわけではないけれど、それでも限りなく私たちの日常感覚がそのまま通用する、「そういう世界」なんです。まさしく、本歌取りの文化を持つ日本人にしか書けない「和製」ファンタジーの言語感覚……とかゆってみたりして。ははは。とにかくびっくり仰天したのですよ。っていうか、びっくりしたのは普段あんまり和製ファンタジーを読まない人間だから、なのかもしれないんですが。個人的には、すげい新鮮。

そんな世界で、思いっきり素朴で心根がまっすぐで「いい人」のフュンフくんが、愛竜シッポと、様々な出来事を通して成長していく。あくまでも平穏を好む超家庭的キャラクターである彼が、いやおうなしに「世界」そのものにとって重要な役割を負わされていく。ところが、いかにスケールの大きい話になっていっても、フュンフくん、決してその「家庭的」で「牧歌的」な自分を失わないのだ。それって、すごく強いってことじゃない?

で、この世界の竜って、すごく「生身」なんだよね。竜を育てる牧場の跡取息子であるフュンフの、細々とした日常の積み重ねがしっかりと語られていて、人間と動物の関係のあり方の理想的な形を追い求めたような、素敵な物語でした。

突然ですが、私はドラゴンファーム長男のキャシアス兄さんが好きです。ってわけで、音信普通だった彼が突然帰郷してくるシリーズ第2弾の『〜ゆかいな仲間』が一番お気に入りかな。いや、「ひとつの小説」としても、これが一番バランス良くきれいにまとまってると思うんだけど、どうかしら。

竜飼いの紋章―ドラゴンファーム〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
竜飼いの紋章―ドラゴンファーム〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

ドラゴンファーム〈2〉竜騎手の誇り (ハヤカワ文庫JA)

ドラゴンファーム〈3〉聖竜師の誓い(上) (ハヤカワ文庫JA)
ドラゴンファーム〈3〉聖竜師の誓い(上) (ハヤカワ文庫JA)

ドラゴンファーム〈3〉聖竜師の誓い(下)    ハヤカワ文庫JA
ドラゴンファーム〈3〉聖竜師の誓い(下) ハヤカワ文庫JA
〔ハヤカワ文庫JA版2001年/親本1998〜1999年,プランニングハウス〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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