本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
妹尾ゆふ子『現実の地平 夢の空〜夢の岸辺〜』(講談社X文庫ホワイトハート)
3部作のうちの第3巻。うー、第2巻探さにゃ。

徹と小泉が高校3年生に進級する直前から、物語は始まります。読み損ねている第2巻でどのように説明されているのかは知らねど、ふたりは現実世界でもカップルと周囲から見なされているようす。ただし、実際には第1巻のラストからほとんど進展なし。高校生活最後の1年、文系志望の徹と理系志望の小泉は別々のクラスに。そして当然、卒業後は別々の大学に行くだろう。そんなとき、第1巻の夢の世界に出てきた人物と同姓同名の女の子が転校してきて、小泉の様子がおかしくなる。

第1巻の物語が、ある1つの夢の中から始まり、その夢から覚める一瞬前に終わってしまったのに対して、本書では現実世界と夢の中の世界が交互に出てくる、というよりむしろ、現実世界の記述が圧倒的に多い。またここでの夢は、第1巻よりさらに象徴的で、抽象的で、分析的で、断片的だ。そして徹と小泉の現実世界に密接にリンクし、現実に対応しながら徐々に変化していく。なんていうか、より「ほんものの夢っぽい」のだ。

それゆえに、本作1編だけを取り出してみれば、この物語は「ファンタジー」と「そうでない話」の間の、かなり微妙なボーダーライン上に位置している。そして、そのこと自体が、ストーリー中で徹が経験する「現実」と「夢」との微妙な関係にも、それとなく対応している……と、いうような印象を受けました。

また、第1話のラストで徹が夢の世界から覚醒したのと同じように、シリーズ3部作全体(第2話を読んでないけど)をある1つの夢のようなものと見たてても、この最終話のラストで、徹は確実に、覚醒に向かっている。その覚醒は、決して今まで彼と小泉(しかし最後まで苗字でしか呼ばれない少女小説のヒロインというのもお珍しい)が共有してきた「夢の世界」を捨て去るということではなく、むしろ自分の中に「夢の世界」を内包しつつ、現実世界で新たなフェーズに進んで行く、というような、そういう覚醒。自分の高校卒業前の1年って、どんなかんじだったかなあ……なんて、色々と考えてしまいながら読んでました。

あと、このシリーズの主人公である徹という男の子。こういうタイプ、すんごい、好みかも。ある意味理想に近いわ。すごくいい意味で、普通。ほとんど変人なくらいに、普通(どんなんや)。きっと、いい男に育ったに違いない。男性から見ると「いねーよ、こんなやつ」ってことになるのかもしれないんだけど。この本、十代の頃に読みたかったなあ。

ああ、第2巻捜さにゃ。一番手っ取り早いのは、出版社が増刷してくれることなんですけどね。

現実の地平 夢の空―夢の岸辺
〔1994年〕
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