本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
篠田節子『女たちのジハード』(集英社文庫)
どうも、他の篠田節子作品と比べると、生彩を欠くような気がいたします。でも、直木賞はこれで取ったんだっけか。うーむ。

いわゆる「婚期を逃した」とみなされる状態のまま大手企業事務系会社員を続ける康子、玉の輿を夢見ていい男ゲットに燃えるリサ、翻訳の勉強を続けつつも今一つ芽が出ない沙織の3人が、それぞれの道を見つけて歩んでいく様を綴ったOL小説……というような説明でいいんでしょうか。

で、読後感がすっきりしないのは、出てくるOLの方々にあんまり感情移入できなかったせいだと思う。この手の話を、自分もOLやってる読み手が読んで、自分と重ねあわせられる部分が全然ないと、かなり苦痛だわな。

感情移入できない、というのは、それぞれのキャラクターが、滑稽なほどに類型化されているせいではないんだろうか。それぞれの要素は、私のなかにも理解できる部分があるんですよ。ところがそれぞれのキャラクターが語り始めたとたん、極端すぎて「なにもそこまで」と思ってしまうんだな。このキャラ設定なら、いっそもっとどぎついコメディ・タッチのノリにしてくれてれば、かえってすんなり読めたんじゃないかな。どうも現実に即したリアルな描写を目指しているのか、デフォルメされたOL像を目指してるのか、判断付きかねて、中途半端に感じました。

ふと思ったんだが、もしかしてこの本に出てくるOLの人たちって、年齢設定に関係なく全員、バブリーな頃に就職した人みたいな言動取ってないか? いや、バブル時代のOLがどうだったかなんて直接は知らないので、見当違いの感想かもしれないんだけど。

というのは、就職活動始めた頃にすでにバブル崩壊していた私の周りでは、この本に出てくるようなOLになった人がほとんどいなかったので。みんなもっとしなやかで、もっと頑丈だ。いざとなれば、明日からでも立派にプータローとして生きていける、という割り切りの気持ちがなければ、恐ろしくてOLなんてやってられない、というのが就職前から共通認識だったような気がする。少なくとも私はそう思っていましたね。社会に出た瞬間からすでに、大手企業に勤めようと3高(死語)男と結婚しようと、人生どー転ぶか分からんって、哀しいけど身に染みてる。だから、この本の主人公たちのやってることが、歯がゆくて仕方がない、のかな?

一番歯がゆいのが実は翻訳家を目指して勉強中の沙織って子。まあ、ああいう結末で良かったんじゃないでしょうか(なげやり)。ああもしかして、これって僻み? 私はこの人が最初っから切り捨ててゴミ箱に投げ入れてた部分を拾ってそれで飯食ってるようなもんだから?……やめよ。書いてて自己嫌悪。

で、結局この人たち全員、会社を辞めてしまうのね? それも実はちょっと、がっかりだったり。どうせなら一人くらい、会社に居座って古い体制を変えようと無謀にも戦って行く子がいてもいいんじゃないかなあ。それこそが、「ジハード(聖戦)」になるんじゃない? 甘いですか? 企業の中に女のいる場所はないって言われてるみたいで、ちょっと辛い。ま、たしかにそれも一理あるんだけど。

ってわけで、敢えてそれなりに好きなキャラを挙げるなら、康子さんかなー。OL生活をちゃんと自分の肥しにしてたわけだし、この人の場合。

たしかに、さすがの篠田節子作品ではあるから、うまく書けててさくさく読める。展開もさわやかです。でも、なんか、今までそれなりに篠田節子作品を好んで読んできた身としては、この人にはこういう話を書いてほしくなかった、というのが正直な気持ち。この手のさわやかOL話なら、もっとうまく書ける「女流作家」はたくさんいるやろ、と。

うーん、なんか読み方を間違えているような気がしてなりませんが、読了した時点では、かなり脱力して労働意欲を削がれていました。


追記(2001.4.15):
結局その後、ちょっと違う結論に達しました。NHK でドラマ化されたり書店で「働く女性たちへの応援歌!」みたいな POP が立っていたりしていたのでうっかり誤魔化されたけど、これって実は安易で薄っぺらな「自分探し・自己実現オンナ」たちへの悪意と皮肉がバリバリ入ったとってもブラックな小説ではなかったのか、と今は思っている。

主役の女のコたち、全然作者に好かれているかんじじゃないんだもん。時々、やたら突き放した書き方になってるような気がして。そういう風に読むなら私、アレは面白い本だと思いますよ。それともただ単に、私が彼女たちをキライなのでそう思っただけ? でもめちゃくちゃ外してるっぽいな、この読み方は。そんな悪意に満ちた小説が直木賞を取るとは思えないし(偏見?)。

女たちのジハード (集英社文庫)
女たちのジハード
〔文庫版2000年/親本1997年〕
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