本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
神林長平『言壷』(中公文庫)
ワープロを超えたワープロ、ネットワークにもつながりユーザーの思考まで代行してくれる記述支援システム、ワーカム。そのワーカムのある世界で、言葉を操っているつもりが操られたり、言葉で現実を表現しているつもりが、いつのまにか言葉で現実が変わってしまったり。自分の立っている場所が分からなくなるような、くらくらする連作短編集。

もちろん、ワーカムというのは小説の中だけの架空の機械だ。なのに、ワーカムを使用する登場人物たちが感じる、自分が(ワーカムで)書いた文章と自分自身の言葉との間の乖離は、なんだかものすごく、なじみ深いものに思える。

それは多分、ワープロやコンピュータソフトを使って文章を作成する、現在の私たちの潜在的な違和感の延長にあるものだから。

さて、この作品自体ももちろんすごいんですが、私が面白かったのは、この本の中に、今まで読んだ神林作品にも出てきたモチーフが入れ代わり立ち代わり出てきたってこと。デビュー当時の短編から最近の長編まで、シリアスなやつからコメディまで、結局この人って、ずっと同じようなテーマを延々考えている人なんだなー、でもそれを「またかよ」と思わせず、手を変え品を変え書き続けているんだなー、という、執念みたいなものを感じました。特にこの作品では、すべてのテーマを思いっきりぶち込んでて、万華鏡みたいでした。けど通して読むと、筋が通ってて。

言壺 (中公文庫)
言壺 (中公文庫)
〔2000年/親本1994年〕
か行(作者名) | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |









http://archive.mushi.pepper.jp/trackback/921646
前の本 | main | 次の本
+ about this blog
 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
 現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
 今後の実質的な更新はありませんが、コメント、トラックバックは受け付けています。