1999.09.30 Thursday
長野まゆみ『夏至南風(カーチィベイ)』(河出文庫)
からりとした本格的な夏がやって来る少し前に、南から吹いてくる湿った風。何もかもを、腐らせていくような、湿った生暖かい、風。
そんな風に吹かれるままに、中国系の架空の土地であるらしい町全体が、そして少年たちが、けだるく腐敗している。なのに、そんな彼らが奇妙に透明な存在に見えるのは、彼らに普通の意味での「愛憎」が欠落しているから、かもしれない。
毒の花のように繊細で傷つきやすく残酷な少年たち……。
昔々のデビュー作『少年アリス』あたりではまだ見え隠れする程度だったこの著者の「毒」っぽい部分が全開ってかんじで、ちょっと戸惑ってしまったけれど、なんとなく「書かれるべくして書かれた作品」という気もした。

夏至南風(カーチィベイ)
〔1999年/親本1993年〕
そんな風に吹かれるままに、中国系の架空の土地であるらしい町全体が、そして少年たちが、けだるく腐敗している。なのに、そんな彼らが奇妙に透明な存在に見えるのは、彼らに普通の意味での「愛憎」が欠落しているから、かもしれない。
毒の花のように繊細で傷つきやすく残酷な少年たち……。
昔々のデビュー作『少年アリス』あたりではまだ見え隠れする程度だったこの著者の「毒」っぽい部分が全開ってかんじで、ちょっと戸惑ってしまったけれど、なんとなく「書かれるべくして書かれた作品」という気もした。

夏至南風(カーチィベイ)
〔1999年/親本1993年〕