本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
笹本祐一『彗星狩り〜星のパイロット2〜(上・中・下)』(ソノラマ文庫)
前作『星のパイロット』が良かったので、さっそく続編のこれも読んでみました。全3巻にも及ぶずっしり長い物語ですが、相変わらず、いやさらにパワーアップしたストーリー運びの巧さで飽きさせません。相変わらず、物理系・機械系のマニアックな説明は半分も理解できていない私なのですが、そんな私にさえ、雰囲気と筆の勢いでそういった記述を読ませてしまうってのは、けっこうすごいと思うぞ。

今回は、社長ジェニファーの離婚した元夫も登場。この人がまた、強烈に印象強いキャラに仕上がってて、いいかんじです。これからはレギュラー出演してくれるのかしら。

やり手だけどカッと熱しやすいうえに、飽くまでもダイナミックな性格してるジェニファーが、大手企業でさえも二の足を踏む、彗星狩りのレースに意地と成り行きとその場の勢いで参加表明。たしかにこれに勝てば、またとないビジネス・チャンスを掴めるんだけど、失敗すれば会社が潰れてしまうかも!? そして勝率は、限りなく低い……。

可愛くないことを言わせてもらうとさ、こういう種類の物語で、こういう始まり方をしたならば、やっぱラストは、彼らがレースの勝者になって「めでたしめでたし」なんだろうなあ、と、すれっからしの読者は心のどこかで思ってしまうわけよ。だから作者の腕の見せ所は、それをいかに、「取ってつけたようなお決まりパターン」で終わらせないかってこと、だよねえ? そういう意味では、この本、充分期待に応えてくれる。

しっかり、最後まで「どきどき、はらはら」させてくれちゃうんだよねえ。しかも、説得力充分。

並み居る超大手と肩を並べて、資金も人材もコネもないスペース・プランニング社が健闘できてしまうという、書き方によっては「そりゃないぜ〜」になってしまうような状況設定でも、ちゃんと「弱小ならではのやりかた」や「小規模な運営だからこその利点」を書き込むことにより、読者を力技で説き伏せてしまう。たとえばこれが、「天才的パイロットの天才的操縦技術おかげで勝てた」なんてのだと、全然面白くなかったと思うのね。

それぞれのメンバーが、自分の持ち場で最大限の力を発揮。このへんの書き方が、もう、とにかく良い! やっぱ、「空を飛ぶ機械」に対する愛がないと書けないよねえ、これは。「宇宙船は、みんなで飛ばすんだ!」と、パイロットだけじゃなく、メカニックからプログラマから社内の経理や事務担当者まで、ありとあらゆる人たちの活躍をまんべんなく書いてくれる。

破れかぶれな主人公たちの前に次々と現れるトラブルは、どれもこれも「さもありなん」なものばかり。そのトラブルへの対処方法は、「それなら行けるかもね」と充分に納得の行くものでありながらも「そう来たかっ!」と意外性を感じさせてくれる、しかもスリル満点の危ない賭け。だからわくわく感が損なわれない。

そして最後の最後、もうこれはレースを諦めるしかない、という状況に置かれたときに、新米パイロット美紀が選んだ道……じたばたじたばた。おおおおっ! 実に、実に納得が行くぞ! この物語では、キャラクターがストーリーのために不自然な行動をとるようなことは、絶対にないのだ。

これだけの長さなのに、まったく胃にもたれずにさくさく読めて、ストレスが溜まらない、エンターテインメントの王道。でも実は、取材にも技術にも、目一杯エネルギーが注ぎ込まれた、力作。しかも、作者も楽しんで書いてるっていうのが、ありありと分かってしまう。

うーん、ちょっともう私、ハマってます。シリーズの次作もすでに出てるみたいだから、絶対読まなくちゃ。

彗星狩り〈上〉―星のパイロット〈2〉
彗星狩り(中)―星のパイロット〈2〉
彗星狩り(下)―星のパイロット〈2〉
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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