本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
浅暮三文『ダブ(エ)ストン街道』(講談社)
行方不明になった夢遊病の恋人タニヤの居所を知る手がかりは、「ダブ(エ)ストン」という地名だけ。正式名称さえ定かではないこの幻の土地では、人間も動物も、皆が迷い続けている……。

迷える生き物ばかりが歩き回っているダブ(エ)ストンという場所の描写が、すごく不思議。変に幻想的で、変に現実的。

むしろ整合性を無視していると思えるほどに、私たちのすでに知る世界の知識や文明や価値観と呼応した部分を残しているのが、なんていうんだろう、ほら、夢の中で全てがわやくちゃなのに一部分だけ妙に現実に即してシビアだったりして、その〈現実感〉でかえってくらくらと目眩がしたりなんかする、あのかんじに似ている。そのどこかブラックな酩酊感と、迷える者たちに対するどこまでも暖かい眼差しの、ブレンド加減が心地よい。

第8回メフィスト賞作品なのだそうですが、これまでの同賞受賞作とは、だいぶカラーが違う。「迷う」という行為に焦点を当てて読めば、これはかなり寓話的な作品なのかもしれない。迷うこと。迷い続けること。迷子になりながら、〈なにか〉を探し続けること。

それが生きているということ? それが意味ということ?

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)
ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)
〔文庫版2003年/親本1998年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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