本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
太田忠司『狩野俊介の肖像』(徳間ノベルズ)
少年探偵・狩野俊介シリーズ9冊目。実はこのシリーズは既に文庫落ちしてる3作しか読んだことなかったんで、いきなり最近の話(つっても一昨年か)に飛んで大丈夫か? という懸念はあったんだけど、まあなんとなく。

中編が4つ。いずれも、保護者である野上さんの知らない、学校での俊介くんあるいは旅先での俊介くんを描いたもの。

なんというか、痛々しさ倍増だなあ。前の学校で、名探偵としての素質ゆえに酷いイジメにあって心に傷を負ってしまった彼は、野上さんに引き取られて転入した今度の中学校では、ひたすら心を閉ざしている。お昼を一緒に食べる友達すら作ろうとしない。

野上さんやアキちゃんや刑事さんなどの大人と一緒のときの、イキイキした俊介を知っている同級生の美樹は、学校での生彩のない彼を見て、いつもやきもきしているけれど、そんな彼女の心からの心配も、伝わっているような伝わっていないような。

「子供は残酷だから、早く大人になりたい」という俊介くんの気持ち、痛いほど過去の自分の気持ちとオーバーラップするのだ。私も、決して俊介のように特殊な生い立ちがあるわけでもなく、俊介のように突出した才があったわけでもなく、俊介のように酷く苛められたというわけでもなかったけれど、それでも中学生の頃はまったく同じことを思っていたから。ある日突然、以前に比べて少しラクになったなあ、と思ったら、それは自分も周りもオトナになったから、だったんだね。

ってわけで、毎度のことながら、謎解きなんてどーでもいいのさ、このシリーズは(笑)。

最初は「目立ちたくない」という理由で頑なに学校で推理力を発揮することを拒んでいた俊介だけれど、否応なしに噂は広まって、生徒や先生から持ち込まれる様々な事件に、関わらざるを得なくなっていく。そのたびに、迷ったり傷ついたりしながら。でも各作品とも、彼が少しずつ、自分を受け入れ、信じるに足る人々を信じることが、できるようになっていきそうな予感が漂うラストで終わっているのが、救いかな。

頑張れ俊介! 君を応援している人は、沢山いるぞ!

狩野俊介の肖像 (徳間文庫)
〔文庫版2004年/親本1996年〕
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