本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
太田忠司『玄武塔事件』(徳間ノベルズ)
少年探偵・狩野俊介シリーズ5作目(長編としては4作目)、俊介の夏休み編。そう、プロの探偵助手とはいえ、彼が自宅から離れた場所での事件をじっくり扱えるのは、学校が休みのときくらいなのだ。学生は辛いね。

野上さんと俊介行き付けの喫茶店のウェイトレスであるアキちゃんが親友二人と一緒に休暇で訪れた、漁村のお屋敷で殺人事件が起こる。状況は、彼女の親友の一人、紫織に不利な状況に。と、いうことで呼び付けられたのが、我らが名探偵・俊介くんと、彼の保護者でアキちゃんの片思い(?)の相手、石神探偵事務所所長の野上さん。

この前に『狩野俊介の肖像』を読んじゃったから余計に思うのかもしれないけど、このシリーズってわりと、「家族」とか「親子」に焦点の当たったものが多い。大金持の豪邸で幸せそうに住んでいても、一皮めくれば複雑な事情が渦巻いていたり、親が子に寄せる愛情や期待が、子にとっては必要以上に重かったり、といった血縁同士の関係であるからこそのどろどろした感情が、肉親のいない、親子の関係を持ったことのない、大金持の論理を知らない、大人の建前を理解しない、糞真面目でいたいけな俊介くんの目の前に広がっていくという、そのコントラスト。謎を解いていくのが、他の誰でもない俊介であるからこその、痛ましさ。彼の鋭く深い洞察力が、その生い立ちゆえに身についたものであるから、余計に。

そんな要素と、いつも出てくる暗号や奇妙な館などの、いかにもレトロな少年探偵物っぽい小道具たちとが、個人的には、ちょっとミスマッチな感じもしているんだ。こういうのって、なんていうか、もっと現実離れした「痛快!」ってかんじの少年探偵なら似合うと思うんだけどな。(その点、『狩野俊介の肖像』は感想で「痛ましさ倍増」とは書いたけど、作品のカラーに関しては、納得しやすかったかな。)

そんなことを言いつつ、結局はさくさくと一気読みしてしまったんですが。

玄武塔事件―名探偵狩野俊介 (徳間デュアル文庫)
〔文庫版2001年/親本1994年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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