本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
馳星周『不夜城』(角川文庫)
普段の私の守備範囲からは、大幅に外れているんです。が、周りでは非常に評判がよろしいし、第一、この度あの金城武主演で映画化されて、もうすぐ公開というではないですか。そのせいで、こんなに早く文庫化されてしまったではないですか。これは、映画上映が始まる前に、ぜひ読んでみなくてはっ!……というわけで、買ってきたです。ええ、金城くんのファンですから、私は。で、一体どんな役をやるんだ、彼は?どきどきどき……とページをめくったわけです。

主人公は、台湾人と日本人のハーフ、すなわち“半々(パンパン)”である劉健一。中国系マフィアが暗躍する新宿歌舞伎町で、故売屋をやっている。3日以内に、かつての相棒で同じ半々の呉富春を捜し出し、上海マフィアに引き渡さねばならない。自分を上海マフィアに売ったのは、かつての後見人、台湾人裏社会のドン楊偉民。健一はどこにも属さない。誰も信じない。いや、この物語では、誰しも、裏切ったり裏切られたり、そんなことばかりなのだけれど。

こういうの、ハードボイルドっていうの? たしかにハードではあるけれど、健一には私が思ってたハードボイルド系キャラのような、自分なりの行動規範や美意識なんてものはないに等しい。健一は、日本人でもなく、台湾人でもなく、宙ぶらりんのまま、ただ生き残るためだけに、小器用に生きている。大局を動かすような大物の悪党でもないし、かといって正義感を杖にして立ち上がる英雄でもない、小心者のアウトローだ。こういう男がね、一番タチが悪いんだよ。心のなかは一番、荒んでいるんだよ。守るべきものが何もなくても、守りたいと思えるものがあっても、この男はきっともう、この暗い街から逃れられない。裏切り裏切られることを前提としてしか生きられないから。何があっても、何も変わらない。生死をかけた3日間も、終わってしまえば、ただそれだけのこと。

一気に読んで、読み終わったあと、ぐったり疲れた。迫力あるの。迫ってくるの。でも、なんだかこちらから力を奪っていくようなかんじ。厳しいんだよな。

でね。主演ってことは、この健一役を、金城武がやるんだよね? ぜーったい、ミスキャストだと思うぞーーーっ!!!(ファンであっても私は冷静)

いや、もしこの役で迫真の演技ができたら本当に偉いと思うけど、でもその時は、私の思う「金城くんの魅力」というものは完全に殺されてしまっているはずだ。いや、主観だけどさあ。駄目なんだよ、金城くんにこういう役やらせちゃ駄目だよ、うーうーうー。「現実にも台湾人と日本人のハーフ」というだけで安直に抜擢されたんじゃないの? もう私、のた打ち回っちゃう。あうー。すんごい「寝ぼけた」かんじの劉健一になるに違いないぞ。こういう荒廃したシャープさのあるキャラに金城くんを持ってくるのはちょっとどうかと思うなあ。大体、金城くんの年齢に映画の中の設定を合わせているとすると(金城くんがいくらヒゲとか生やしたって、原作通りの「三十代半ば」で通用するとは思えん)、ストーリーの説得力にもかなり無理が出て来ないか? そのへん、どうしているんだろう?

でも、結局は怖いもの見たさで観に行くんだろうなあ……映画版「不夜城」。なんか角川書店に踊らされてるみたいな気がしてきた。いや、映画を見てみないことには何とも言えないわけですが、「金城武・新境地を開く! 新たな魅力発見!」となる可能性もなくはないんですが、しかし少なくともこれを書いてる時点(1998年6月初頭)で、私はあまり期待はしておりません、はい。期待しないで観るほうが、かえって「思ったよりいいじゃん」ということになるかもしれないし(健気)。

しかし……果たしてこれは読書感想文、と言えるんだろーか。でも、とにかくこの本を読んで一番最初に頭に浮かんだのが、これだったんだもん。えーと、金城武が映画版に主演するということさえ考えなければ、小説自体は、好き嫌いを超越して、ただただすごいと思いました。どうも失礼。

不夜城 (角川文庫)
不夜城 (角川文庫)
〔1998年/親本1996〕
は行(作者名) | permalink | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
映画は、原作よりもラブストーリー部分に光があたって甘めのセンチメンタルな仕上がりで、なんだか金城くん仕様になってました。
| 2009年のならの | 2009/01/10 10:59 PM |









http://archive.mushi.pepper.jp/trackback/921222
前の本 | main | 次の本
+ about this blog
 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
 現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
 今後の実質的な更新はありませんが、コメント、トラックバックは受け付けています。