本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
Robert J. Sawyer "Fossil Hunter (The Quintaglio Ascension Trilogy #2)" (New English Library)
知性を持つ恐竜たちの世界を描いたあの『占星師アフサンの遠見鏡』の続編。今回ストーリーの要となるのは、前作でのアフサンと近い年頃の、すなわち通過儀礼の巡礼と狩猟を終えて間もない、地質学者トロカ。アフサンの息子であります。

調査チームを率いて世界中をめぐるうちにトロカは、かつてのアフサンと同じく、いくつかの驚くべき発見をします。そして、それまでの社会通念をくつがえす結論に至る……なるほどこれは、そういうシリーズだったのですね。ちなみにソウヤー自身のウェブサイトでは、本作は「恐竜ダーウィン」の物語として紹介されています。トロカという恐竜のキャラクターがある意味、前作のアフサンよりもさらに読者である私たちニンゲンに近い設定になっている(これにはストーリー上の必然性があります)ので、感情移入がしやすいぶん異質な視点の新鮮味は薄れた感はあるものの、その思考の軌跡は、やはりスリリングです。

しかし今回のさらなる特徴は、その旅路と並行して、いくつかの別の要素が語られること。そのひとつは、トロカの留守中に都で起こった、一連の事件です。こちらの話では、お馴染みアフサンと皇帝ダイボが活躍します。突如浮上した皇位継承権争、いや前代未聞の凶悪犯罪に、ふたり(2頭?)が臨む!

で。実をいうと、「アフサンとダイボ〜漢(おとこ)の友情物語〜」ってかんじのこっちの話のほうが、トロカの話よりも気になっちゃって。ダイボ大丈夫かーっ!? ダイボがんばれーっ! って。そう、なんか昔は精神的に弱いところもあるおぼっちゃま恐竜くんだったダイボが、本作ではすっごくいい男に成長してるんですわ(恐竜だけどな)。ダイボの成長物語と言ってもいいかも。元来の素直でおおらかな品格(恐竜だけどなっ)に加えて、優しさと謙虚さ、そして最終的に会得したいざというときの理性と勇気(恐竜だけどなっっ)……おまけに美声の持ち主なんて、もう本当にめちゃくちゃ私好み(恐竜だけどなっっっ)。嗚呼、わたくしが恐竜に生まれていれば! しかも最後のほうでは、もんのすごい壮絶なクライマックスが!! 恐竜だけどっ!!!

……はっ。少々興奮してしまったようです。失礼いたしました。よく考えたら、キンタグリオ族というのは基本的に「なわばり本能」に縛られており個体同士の距離を縮めることができないので、たとえ私があの世界で恐竜に生まれていても、ダイボとらぶらぶな生活を送るのは不可能なのですね。しくしく。

恐竜たちの社会の根幹をなすこの「なわばり本能」、本作では前作よりもさらに重い意味を持っています。トロカたちの旅路にも、アフサンやダイボが直面する問題にも、影を落としている。そしてバラバラに提示されていた各エピソードの意味が明らかになったとき、私たちはこの物語のすべての要素が、彼らキンタグリオという知性体の出自と、生物としての本質、そして進化の物語を構成していたことを悟るのです。

愛すべき肉食恐竜たちを主役に据えた、時にユーモラスで一見荒唐無稽な設定を皮一枚隔てた向こう側から、「SF」が透けてみえてくる。それがすごく新鮮。

Fossil Hunter: Book Two Of The Quintaglio Ascension (Quintaglio Trilogy)
Fossil Hunter: Book Two Of The Quintaglio Ascension (Quintaglio Trilogy)
〔1993年(リンク先はTor版)〕
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