本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
久美沙織『あいたい。』(TOKYO FM出版)
あーまたまた気恥ずかしい本を。何故か無視できなくて。

私にとってはどうしても少女小説家としてのイメージが強い(「おかみき」!)久美沙織の100冊目の本は、8歳年下の恋人(現在は旦那さん)で同業者の波多野鷹に宛てて書き綴ったラブレター。

1989年6月、付き合い出して3ヶ月目。波多野は久美の友人でもある“めるちゃん”こと漫画家めるへんめーかーと1ヶ月間のイギリス二人旅に出てしまう。波多野・める共著『不思議英国』(白泉社)の取材のため。一方、久美は『MOTHER』(新潮文庫)執筆のため20日後まで日本を離れることができない。その離れていた間に書かれた、自分以外の女と海の向こうで車の旅をしている恋人への、膨大な量の殆ど日記状態なラブレター。

こういうものを、本として出版できてしまう心理って、実は判らない。こういうものを、読んでしまう自分の心理ってのも、よく判らない。正直言って、興味本位って部分もあるよなあ、絶対。

と、言いつつ、ちょっとシンクロしてしまった。シンクロさせるだけの、迫力はあるの。彼女は「書く」という行為で精神のバランスを保っている。書かなければ嫉妬と寂しさで精神が崩壊してしまうかもしれないから、勢いにまかせて書きなぐる。息が詰まりそうなくらい濃密な感情が日常生活のなかに滲み出てくる自分の状態を、そのまま綴る。……恋愛は体力なのね。

私だったら、少なくとも自分が生きてるうちはぜーったいこんなの出版しない。自分たちだけに取っとく。でも、せっかく魂込めて書いた力作な文章を発表しない手はない、と考えてしまうのが、作家という人種なんでしょうね。

実は昔めるへんめーかーのファンだったんです、私は。それでなんか急に、こういうシチュエーションでも友達に「めるちゃんと行くなら心配ないじゃない」とか言われてしまったという、恋愛にのめりこめない体質のめるへんめーかーの描く“淡々系”なラブストーリーが私は好きだったんだなあ、などと関係ないことにいきなり思いを馳せてしまったりなんかしたのだった。巻末の鼎談読んだら、“めるちゃん”っていい人だなあ、と思うよ。こういう人に私はなりたい、とたまに考える。

あいたい。
あいたい。
〔1996〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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