本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
北村薫『ターン』(新潮社)
ある日突然。世界のなかに、たった一人で。取り残される。同じ一日が。永遠に繰り返される。あなたなら、どうする? わたしなら、どうする?

しんとした世界にたった一人の私なのに。誰かが私を見ている。誰かが私の物語を、二人称で、語っている。あなたは、誰? その謎が読み手に明かされたとき、この物語はラブストーリーになる。

うるうるうる。互いに現実世界では出会ったことのない二人が心を通わせる場面なんて、涙が出ちゃったよ。みずみずしい、清潔な世界。ふーむ。

ところで。私のなかに「ならのホワイト(仮名)」と「ならのブラック(仮名)」がいて、だな。前者(W)はこの作品を、なんて美しくて前向きな、素敵なお話なんだろうと思う。後者(B)は、なんかこれって割り切れないんだよなあと思う。

だってこの人、この恋を、自分で選んでないもの。生まれたときから定められた(でもそれ誰が定めたの?)、いつか迎えにやってくる赤い糸でつながった王子様を、ただただ清廉潔白に待ち続けただけだもの。それって、そんなにいいことですか? 「あなた以外見えないから、あなた以外の人を知らないから、だから私はあなたが好き」と言われて、嬉しいもんですか?……嬉しいんだろうなあ、ちぇっ(笑)。『夏への扉』に対する反感と似たものがあるな、この辺。ははは。あと、最後のお約束のような収束の仕方も、私ちょっと駄目だったなあ。

もちろん、これは現実から乖離した美しいファンタジーとして楽しめばいいんだってことは分かる。でも、これを“美しい”と感じてしまう感性そのものが、結構“腐ってる”んじゃないか?(って、そこまで言うか、私?)

なのに。なのに。ヒネクレ者の「ならのB」がそう思う端から、純情でおセンチな「ならのW」がわらわらと出て来て、結局は感動してしまってたりするのが、なんかすごい悔しいぞ(笑)。罠に嵌まったような気がしてならないぞ(苦笑)。(←もっと素直になれよ、私)

ターン (新潮文庫)
ターン (新潮文庫)
〔文庫2000年/親本1997年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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