本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
はやみねかおる『そして五人がいなくなる』(講談社青い鳥文庫)
わたしたちの町に、名探偵が引っ越してきたの!

……という冒頭部分。なんだかわくわくさせられます。一部で妙に評判のいい、はやみねかおるのジュニア向け(小学上級から、だそうだ)ミステリ。私は初めて読みました。夢水清志郎シリーズ第1作。

もとは大学教授だったという名探偵・夢水清志郎は、不思議な人。年齢不詳、ものぐさ、忘れん坊、食いしん坊、常識知らずでマイペース。でも自分が「名探偵」であるということに関しては、おっそろしいくらい自信過剰。だから遊園地で子供たちが消えてしまうという怪事件に遭遇しても「ぼくはこの事件を解決する!」って言い出して、まるで駄々っ子みたいだなんて、中学1年生の「わたし」にまで思われてしまうのです……。

なるほどなあ。確かにミステリとしては子供向け(でも「子供騙し」には堕ちていないかな)だ。語弊を招く言い方かもだが、児童文学史上に残る名作だとも思わない。しかし「物語」としては、オトナの人にも(下手するとオトナの方が余計に)ほろりとくるものがあるのではないでしょうか。“犯行”動機とかは、結構すぐに読めちゃうんだけど、ほんわりと温かい解決編だね。

「いまの子どもと昔の子どもと、どっちが幸せだと思う?」
わたしがきくと、教授はあっさり答えた。
「どっちも幸せだよ。子どもは、いつの時代だって幸せなんだ。また、幸せでなくちゃいけないんだ。」

うるうる。わたくし、この箇所で不覚にも目の奥がつんとしました。そう、幸せでなくっちゃね。子供も、そして大人も。私が小学生の頃にこの本を読んだら、きっと、おそらく、絶対
「私の町にも、夢水清志郎が来ないかなあ」
って、夢見ていたにちがいない。

……とは思うんだけど、でも実は、この本を読んだ「いまどきの小学生」はどういうリアクションをしているのかという「生の声」を誰かレポートしてくんないかなあ、なんてことも思う。大人になってしまった私がほろほろ来たようなところで、現役の小学生にはあんまり引っかかってほしくないな、正直言って。今は無邪気に明るく謎解きや“教授”こと夢水探偵の茫洋としたキャラクターを楽しんでいてほしい。そして自分が大人になったとき、何かの折に彼のこの台詞を思い返してみてほしい。

そして五人がいなくなる―名探偵夢水清志郎事件ノート
そして五人がいなくなる―名探偵夢水清志郎事件ノート
〔1994〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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