本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
西澤保彦『複製症候群』(講談社ノベルス)
随分昔に見た夢を思い出した。夢のなかの私は、なぜか12人いる。で、一人一人、誕生日が1ヶ月ずつずれている。つまり、〈私〉たちは全員「星座」が違うわけ。そいで細かいことはもう忘れたけど、とにかく全員〈私〉であるにも関わらず、「意中のカレ(笑)」との相性が各〈私〉ごとに違うために本人同士で鞘当てをする、みたいな夢だったかもしれん。起きてるときの私は星占いなどほとんど眼中にない人なのであるが。

閑話休題。とにもかくにも、「自分」がもう一人できちゃうっていうのは、かなり大変なことだ。そういう状況下で、主人公たちは各々の性格に従って、どのように行動するのか。

相変わらず、西澤さんは推理の前提条件となる部分を、なんの説明もなくポンと出してくる。突然、天から降ってきた巨大なチューブ(ストロー)に触れると、触れた人間のコピーができてしまう。そこに閉じ込められ、そして、人が死ぬ。ただそれだけだ。キャラクターたちの性格は、非現実的なまでに、くっきり、はっきりと極端に書き分けられている。彼らの性格そのものを、読者である私たちは推理の材料として思考過程に組み込まなければならないから。

ぐいぐい読んじゃいました。全体を通じての大きな謎、というよりは、小さな謎の積み重ねで、実は何がなんだか良く分からないうちにあれよあれよとストーリーが転がっていって、最後まで引っ張られてしまったというかんじ。そして、「自分」という単位について、色々と考えさせられるちょっと宙ぶらりんな余韻を残すラスト。謎解きを楽しむというより、私は「もう一人自分がいるって、どんなかんじだろう」「今ここにいるこの“私”が唯一無二な存在だなんて、本当に言えるんだろうか」というようなことを急にしみじみと考えてしまったのでした。

複製症候群
複製症候群
〔文庫2002年/新書1997年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
 現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
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