本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
我孫子武丸『ディプロトドンティア・マクロプス』(講談社ノベルス)
「タイトルがずばり主人公!」と帯に書いてあるのがとっても気になる。噂では百科事典を引くとわかるそうなんだけど、実家に帰らないとないんだよね、百科事典。語感からの予想では、マクロプスのマクロっていうのは要するにあれだろう。ディプロトドンティアってたしか……ぱらぱらぱら(辞書を繰る音)。おおっと。百科事典引くまでもなく、『リーダーズ英和辞典』で大体分かってしまいましたよ。つーことは、うん、ディプロトドンティア・マクロプスって多分こういうことだろう、ふんふん。そーか、あいつが主人公か(笑)。

なんて、私がすんなり納得できてしまったのは、実は『メフィスト』連載時の最終回だけを読んでそれまでのストーリーを想像するなどという阿呆なことをやってしまっていたからである。多分、全くの白紙状態なら、読む前にこの語の文字通りの意味が分かっても「なあるほど、まさしくそうだな!」と改めて思うのは読み終わってからだろうと思うのね。

しかしこの長いタイトルの意味を結局最後まで作中では明らかにせずに終わるっていうのも、なかなか面白い試みだなあ。……と感心していたら、その後我孫子さんご本人のウェブページ日記で、言葉の意味が本のどこにもないのは「書き忘れ」であったと説明されていた。こっちの深読みが滑ったか(笑)。

とにかくそういうわけで私は、もしかしたらこの本の一番おいしいとこだったかもしれない要素、つまり、しがない私立探偵が依頼されたごくありきたりな失踪事件と、小さな女の子の「動物園からいなくなったカンガルーを見つけて!」という可愛いお願いが、途中からトンデモナイ方向に進んでいって……という意外性を味わえたとは言いがたい状態なわけです。ああなんか損した。私が馬鹿でした。

でも、この語り手の探偵さん、いい人だ。世間から見れば、くだらないことにこだわる偏屈な人なのかもしれないが。がんばれがんばれと応援してしまいます。探偵も、女の子も、カンガルーも、世間の基準から外れた変わり者はみんな少しだけ孤独なのかもしれなくて、でも精神的にはたくましくて、健気。ちょっとメルヘンだね。メルヘンのわりには、「京都を揺るがす」すんごい話だが。きゃはははは。羽茶目茶な話だけど、心温まる読後感。

ディプロトドンティア・マクロプス
ディプロトドンティア・マクロプス
〔文庫2000年/新書1997年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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