本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
いとうせいこう(文)・みうらじゅん(絵)『見仏記』(角川文庫)
みうらじゅんというのも、不思議な人である。この本の口絵として、彼が小学校時代に作ったという「仏像スクラップブック」が紹介されているのだが、レイアウトといい、書き込まれた手書きの文章といい、本当に並々ならぬ熱意が伝わってくる。小学生としては珍しい趣味だよね。

その彼が大人になり、いとうせいこうという友を得て、二人で仏像めぐりの旅をするという企画を思い付く。みうらの仏像を見る視線は、あらゆる束縛から開放されて自由にはばたいている。彼はとにかく、「あの人たち(=仏像)」が好きで好きでたまらないのだ。いとうも側で「人じゃないってば」などと苦笑しつつ、いつしかその熱情に巻き込まれていく。

みうらにとって、仏たちは極楽浄土からやってきてお堂でコンサートを開く、人気絶頂の来日アーティストだ。般若心経は仏教界のビルボードで常に一位をキープする大ヒットソングで、朱印帳はサインブック。お寺の横のみやげもの屋に行けば、写真集やテレホンカード、キーホルダーなどの「アーティスト公認グッズ」を売っている。

彼は巨大な仏像を堪能するには寝転がって床から見上げるのが一番(このスタイルだと仏様に“足を向ける”ことになってしまうわけだが)と主張し、ハワイで休暇を過ごす美しいバーのママとしての吉祥天女像を空想する。そんなみうらを見守るいとうは、世間の常識に照らしての批判から彼を守ってやらなければと決意し、みうらが直感で言い放つぶっとんだ一言一言に、論理の裏付けを見出して文章化しようと心を砕き、言葉を尽くす。

ところが。旅が終わりに近づいたとき、みうらが今まで自分をどのように見ていたのかを知って、いとうは愕然とするのである……。

この二人、すっごくいいコンビだ。この二人でなければ、このテーマでこの本はありえなかった。仏像の知識よりも、いとう氏とみうら氏という二つの強烈な個性が一冊の本を作っていってる、セッションの妙を楽しみました。仏像に興味ある人も、ない人も(私ははっきり言って、普段はあまり興味ない人です)、面白く読めるはず。

見仏記
見仏記
〔1997/1993〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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