本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
林真理子『ワンス・ア・イヤー〜私はいかに傷つき、いかに戦ったか〜』(角川文庫)
林真理子は、実は嫌いじゃない。殆どエッセイしか読んでいないのだが。私の好きなコラムニスト中野翠が前に、友人であるこの人のことを“欲望の対象は普通だが、その強さが桁外れであることによって彼女は非凡だ”みたいなことを書いてたように思うのだが(すみません、うろ覚えです)、まさしく、そういう感じ。そういう上昇志向の強さ、自意識の強さ、陶酔する能力と、その陶酔に溺れない醒めた視点が両立しているのが面白くて、本来は私の守備範囲じゃないんだけどたまに手に取ってしまう。ああでも最近の作品はどうなのかな? 昔のしか読んでないや。

で。就職にあぶれたボロアパート暮らしの冴えない女の子だった23歳から、徐々にステップアップして売れっ子コピーライターの20代後半を経て30代で直木賞作家になり、結婚、という林真理子自身の経歴と嫌でもダブるように書いてあるこの本の、主人公である〈私〉はかなり“ヤな女”である。ここまでシビアに書くか、というほど。でも、判る。決して感情移入はしないのに、理解できてしまう。納得できてしまう。こういう風にして、戦わなくてはいけなかったんだ、この人は……と。

私が一番印象に残ったのは、まだコピーライターとして会社勤めしていた24歳の頃の話。スーパーのチラシとかを毎日作る生活に〈私〉だけが満足していなくて、そして周りの人間が“野心”というものを全く持たずにいられることが「信じられなかった」というくだりだ。そう、彼女には、信じられなかっただろう。

うーん、実はねー、小説としては、こういうのあんまり好きじゃないんですよ。ただ、「林真理子は常に自らの世界の主人公である」というのを強烈に認識させてくれるという意味では、ちょっと迫るものを感じてしまったのでした

ワンス・ア・イヤー―私はいかに傷つき、いかに戦ったか
ワンス・ア・イヤー―私はいかに傷つき、いかに戦ったか
〔文庫1997/単行本1992〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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