本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
岡嶋二人『クラインの壺』(新潮文庫)
この作品の後、コンビ作家“岡嶋二人”は解散して、井上夢人氏だけが作家として活動を始めるのである。だから、これが最後の岡嶋作品。

すでにその辺の事情を書いた井上氏の『おかしな二人』を読んでしまっているので、かえって今まで手が出ずにいたのだが。読んでみて、なるほどと思った。

面白いの。うん、確かに、面白い。それに、怖い。ある画期的なバーチャル・リアリティ技術を駆使したゲームをめぐる……うーん、駄目だ。どう書いてもネタばれになってしまう。とにかく「クラインの壺」というタイトルは絶妙だ! とだけは言っておきましょう。

ただ、私が“岡嶋二人”という作家を知って以来ずっと彼らに求めていたのは、こういう小説ではないのだ。彼らの実質的な処女作である『あした天気にしておくれ』やデビュー作『焦茶色のパステル』(講談社文庫)を私は今でも大好きで、そしてこの最後の作品は、それら初期作品とは、まるで違っている。

私は井上氏の小説をまだ一冊も読んでいないけど、多分、こういう作風なんじゃないだろうか。多分、これは著者名を「井上夢人」に変えても殆ど何の違和感もない作品なんじゃないだろうか。

“岡嶋二人”の終焉と“井上夢人”の誕生。そんなことをつい考えて、少しだけ切なかった。

クラインの壺
クラインの壺
〔講談社文庫2005/新潮文庫1993/単行本1989〕
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