本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
清水義範『発言者たち』(文春文庫)
「ユーモアのなかにも鋭い洞察が光る、長編小説」と、カバーの内容紹介には書いてあるんだけど。これは、かなりきつかったです。

主人公であるライターの番匠が興味を持って調べ始めた「巷の発言者たち」。すなわち、新聞・雑誌への投書、TV局への抗議電話、パソコン通信上での論争、などなどで、自分の意見を他者に向けて発表することに多大なエネルギーを費やす人々。あるいは、地方で「文化的」活動に精を出す人、やたら有名人とお近づきになりたがる人。はたまた、自分の書いた文章を、知り合いに送りまくる人。そういう無名の人々の勘違いや偏執的な部分や自意識過剰ぶりが、かなり辛辣な観察眼で描かれている。

一体、彼らは何故そんなことをしているんだろう。何故、そんなにして、「自分の意見」を広く世間に伝えたいと思うのだろう。

そんなことをつらつらと考えているうちに。番匠は、自分自身彼らとどこが違うのか、という思いに捕らわれ、書けなくなっていく。「何かを書いて他者に読ませる」という行為、「私の発言に耳を貸せ」と他人に迫るような身勝手な行為が、果たして許されていいのか、と。

さて、ひるがえって。私自身の話である。ウェブページでくだらない茶飲み話など公開している私と、この本で風刺されている自意識過剰な「発言者たち」、一体どこが違うというのか。これを読むと、そういったことを考えざるを得ない。怖い本です。一体私は何故、ウェブサイトなんか持っているんだろう。もしかして、すごく馬鹿なことやってるんじゃないだろうか。

それでもなー。今更、止めらんないよ。こんな面白いこと。ねえ?

発言者たち
発言者たち
〔文庫1996/単行本1993〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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