本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
鈴木輝一郎『国書偽造』(新潮文庫)
時代物の苦手な私は恐る恐る読み始めたんだけど、途中からはすっかり引き込まれて一気に読んでしまった。

寛永八年、徳川家光時代。対朝鮮外交を担う対馬藩の家老、柳川調興が、主君である宗義成を飛び越えていきなり幕府に対して起こした、ある訴え。調興の目的は……?

これは柳川一件として知られる史実に基づいている話なんだそうだけど、日本史音痴の私にはこれ以上のことは言えません。下手に説明したら藪蛇になりそうなので、悪しからず。

主役の柳川調興が、もうめちゃくちゃ渋い! かっこいい! 自分の力に自信があって、その自信に見合う力があって、なのにその力をフルに試してみる舞台を与えられないで歯がみしている。その彼が、ついにいちかばちかの勝負に出たのがこの一件なんだけど、そのかけひきの上手さ、頭の回り方、武士としての実力、そして人間的な魅力……彼が持ち札の全てを総動員して、勝負を自分の流れに持っていこうとする過程が、本当に面白い。引き込まれます。

と、同時に。能力さえあれば誰でも上を志向することのできた下克上の時代が終わり、世の流れが秩序と安定に向かうなかで、その“時代の流れ”を敏感に察知しつつも時代に逆行するように夢を追うことをやめられない、彼の悲哀が切ない。なんかいろんなこと、連想してしまう……。

国書偽造
国書偽造
〔文庫1996/単行本1993〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
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