本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
著者名インデックス(ファミリーネーム A〜M)
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      Christy Marx "Martial Arts Masters: Jet Li" (The Rosen Publishing Group, Inc.)
      「読了本」として勘定してよいものかどうか迷ったのだけれど、まあ一応。

      アメリカの出版社から出ている武術アクション俳優の子供向け伝記シリーズ。ジェット・リー(リー・リンチェイ)のほか、ジャッキー・チェン、ブルース・リー、ミシェール・ヨーなどの巻もあるようです。

      子供向けだけあって大きめの活字で 100 ページほど。写真はあまりなし。特に前半部分は、たまに挿入される写真ページも子供時代のリンチェイと同様な修行を受けている別の少年だの、彼が生まれた北京の町だのばかりで、本人は登場せず。おおまかな経歴が語られたあと、武術に興味を持つ子供たちへのリンチェイからアドバイスが紹介される。

      しかしそれにしても恐るべし中国。たまたま 8 歳のときに参加した夏休みの武術教室で才能を認められたことをきっかけに、リンチェイはやがて学校をやめさせられて才能のある子供たちばかりを集めた寮に入れられ、朝から晩まで毎日ハードな修行を続けることになってしまうのである。いいんか、そんなことして。

      そして 11 歳のときに政府の命を受け、ほかの子供たちと一緒に外交政策の一環として中国武術のデモンストレーションをするため世界各国へ派遣される(ああ、しかし演武をする 11 歳の彼はさぞかしかわいらしかったことでしょう!←すみません、所詮はファン視点でしか読めない)。

      最近目覚めたばかりの初心者ファンなので、子供向けでもなかなか楽しかったです。「クンフー」という単語を中国武術とイコールの意味で定着させたのはブルース・リーであるとか、少林拳の由来だとか、どういう型があるかとか。Mao Zedong っていうのは毛沢東の英語表記なんだな、とか Forbidden City っていうのは文脈から推察するに紫禁城ですかー、とか(あとで調べたら本当にそうだった)。とにかく、日常生活ではまったく役に立たない知識が微妙に増えました。

      Jet Li (Martial Arts Masters)
      Jet Li (Martial Arts Masters)
      〔2002年〕
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      C.S. Lewis "The Horse and His Boy" (Collier Books)
      以前、C・S・ルイスの「ナルニア」シリーズを原書で再読してたときに、これだけ読みそびれていたことに気付いたので。

      子供の頃の漠然とした記憶よりずいぶんと短い旅だったことに驚いた。初めてライオンに出くわすのは物語後半に入ってからだと思い込んでいたら、けっこう序盤のほうだったり。これ、タイトルが好きなんだよねえ。"The Horse and His Boy" だもん。馬主体。

      The Horse and His Boy (The Chronicles of Narnia)
      The Horse and His Boy (The Chronicles of Narnia)
      〔1954年〕

      邦訳:C・S・ルイス『馬と少年』(瀬田貞二・訳/岩波書店ソフトカバー新装版2000年/親本1966年)

      馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)
      馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)
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      スーザン・クーパー「闇の戦い」シリーズ(評論社)
      去年の暮れに急に再読したくてたまらなくなって、図書館で全 4 巻借りてきました。シリーズに対する思い入れについては、その頃の近況報告に。本当は 5 部作ということになっているけど、第 1 部は主人公が違うので、個人的には 4 部作扱いでも別にいいかなあ、なんて。一番好きなのは……と書こうとして、全部それぞれ優劣つけがたく好きであることに気付いてしまった。

      現代イギリスが舞台のファンタジーなんだけど、アーサー王伝説やマビノギオンなどが下敷きにあって、重厚な奥深さのあるシリーズでした(第 1 巻は、2 巻以降の主人公が登場せず、ちょっと軽め)。

      個々のシーンの描き方がすごくビジュアルで、今でも色々、脳裏にわーっと浮かんでくるよ。イギリスならではの日常生活の描写も面白かった。時間を超越した人外の存在でありつつ「普通の男の子」でもある主人公のキャラクターも好きだった。日本語版の、浅羽莢子さんの翻訳もすばらしかった。人の認識を超えたところで闇と光が争う時の流れの中においての、個々の「普通の人間」に対する視線の無情さみたいなのが垣間見える部分があって、母親は私がせがむのに応えて全巻買ってくれつつ、小学生が読む本としては問題があるのではと危惧していたし(子供に与える本には、かなりきっちり目を通す親でした)、はっきりそう言われもしたが、当時はそういうのも含めて、入れ込んだ。

      思えば、小学生のときにこのシリーズに出会わなければ、一時期の私は存在しなかったはずです。大学で史学科を選んだのは、もしかしたら間接的にトールキンのせいだけど(普通はトールキンの影響なら、英文学や言語学や神話学に行くのかもしれんが「世界観を得る」という意味で私にとっては「史学」だったんだよ)、アーサー王伝説やブリテンの歴史やウェールズに興味を持って卒論でウェールズ中世史を取り上げたことには、明らかに子供の頃からの「闇の戦い」シリーズ(特に後半)への愛が大きく関与している。そういえばアレッド・ジョーンズも最初は、「ウェールズ出身」というところに興味を持ってアルバムを買ったんだった。

      闇の戦い〈1〉光の六つのしるし (fantasy classics―闇の戦い)
      闇の戦い〈1〉光の六つのしるし (ファンタジー・クラシックス)
      〔浅羽莢子・訳/新版2006年/1981年〕
      (原書 Susan Cooper "The Dark is Rising" 1973)

      闇の戦い〈2〉みどりの妖婆 (fantasy classics―闇の戦い)
      闇の戦い〈2〉みどりの妖婆 (ファンタジー・クラシックス)
      『緑の妖婆』〔浅羽莢子・訳/新装版2006年/1981年〕
      ("Greenwitch" 1974)

      闇の戦い〈3〉灰色の王 (ファンタジークラシックス)
      闇の戦い〈3〉灰色の王 (ファンタジー・クラシックス)
      〔浅羽莢子・訳/新装版2007年/1981年〕
      ("The Grey King" 1975)

      闇の戦い〈4〉樹上の銀 (ファンタジー・クラシックス)
      闇の戦い〈4〉樹上の銀 (ファンタジー・クラシックス)
      〔浅羽莢子・訳/新装版2007年/1982年〕
      ("Silver on the Tree" 1977)
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      ダイアナ・ボストン『ボストン夫人のパッチワーク』(平凡社)
      あー、買っちゃった買っちゃった。引越しが終わるまでは、かさばる本を買わないでおこうと思っていたのに、ハードカバーの写真集を買っちゃった。見たとたんに、これは買わなきゃと思ってしまって。

      ルーシー・ボストンの「グリーン・ノウ」シリーズ(評論社、亀井俊介・訳)は何度も何度も読んだ子供の頃のお気に入り本である。読むたびに“イギリスの古い家”に対する憧れを募らせたものである。そういえばパッチワークが重要な役割を果たす話もあったっけ。ボストン夫人自身が、パッチワーク作家でもあったんだ。

      手に取ってめくると、あのグリーン・ノウ屋敷のモデルになったという古びたマナーハウス(The Manor)を背景に、物語に出てきたのと同じくらいの、いや想像をはるかに超えた迫力を持つパッチワーク作品の数々。そしてグリーン・ノウの女主人そのままのような、ルーシー・ボストンの肖像。

      作品群は、「カントリー調」とはちょっと違った、モダンなかんじに見えるものが多いように思える。すべてボストン夫人自身のデザインによるものらしい。パッチワークに対して持ってたイメージが変わったね、わたしゃ。いや、恥ずかしながら、こういうのってあんまり詳しくないもので、「カントリー調」にも間違った固定観念を持っているかもしれないんですが。

      本書の著者ダイアナ・ボストンは、ルーシー・ボストンの息子の妻にあたる人らしい。翻訳をしているのは、ルーシー夫人存命中に The Manor に下宿していたこともあるという、林望氏。1つ1つの作品の解説や、ルーシー夫人の生涯についてなどの記述もあります。

      翻訳文は、読みやすいんですが、ところどころに林望センセイの普段の随筆で読み慣れてる、インテリおじさんっぽい言い回しが垣間見られて、著者であるダイアナさんの写真が載ってるだけに、なんとなく違和感が。でも、ちょっとほのぼの。これも先入観なのかなあ?

      ところでこの本、書店の手芸コーナーにあったんですけど。なんか違うような、違わないような。目にとまったのは、ほんとに偶然。

      原書:Diana Boston "Patchworks of Lucy Boston" (Oldknow Books, 1995)

      ボストン夫人のパッチワーク
      ボストン夫人のパッチワーク
      〔林望・訳/2000年〕
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      Robert Arthur "The Secret of Skeleton Island" (Random House)
      ジュピター、ピート、ボブの3人組が活躍する少年探偵シリーズ "Alfred Hitchcock and The Three Investigators" 第6作。

      ボブのお父さんが海に連れていってくれるというので、シリーズ第5話の頃から探偵活動の合間にスキューバ・ダイビングの練習に励んでいた少年たちに、ピートのお父さんからお声がかかった。ピートのお父さんは映画会社勤務。ちょうど撮影中の映画で、ダイビングのできる少年のエキストラが必要になったのだ。撮影が進められている東部の無人島には、海賊の宝が隠されているという言い伝えがあった。また島の近くの田舎町に滞在中の撮影隊は、犯人不明の執拗ないやがらせを受けているらしい。

      映画に出演しつついやがらせの謎も解ければ、探偵団の面目躍如! ついでに宝捜しもしてみたい。はりきって飛行機に乗り込んだ3人だったが、到着先の空港で出迎えと偽った謎の男にだまされて、撮影場所とは別の無人島に置き去りにされてしまう。

      私、基本的にこのシリーズのセリフ回し、好きです。特に三人の少年たちそれぞれの個性がすごく出てる。地の文で「だれそれが言った」という説明がなくても、どの子が口にしたセリフなのか分かっちゃうくらい、書き分けが上手い。でも。「ガイジンの子供」のセリフになると、突然ワンパターンなんだよなあ。第2話ではメキシコ人、第5話では日本人、そしてこの第6話では素潜りの得意なギリシア出身の男の子が登場するんだが、なぜかみんな似たり寄ったりの英語を喋るのだ。「英語の拙さの種類」が、同じなの。そんなはずないのにね。第1話みたいにアメリカ人の子供だけ出してりゃよかったんだよ。そう思うのは、私自身も英語ネイティブじゃないからだろうか。でも、そんなこと、読者であるアメリカ人の子供は、考えなかったんだろうなあ。日本人の私でさえ、20年前に愛読していた頃は、そんなこと考えませんでした。

      もともとスポーツ得意なピート、足のリハビリのために水泳の練習を頑張ったボブに比べて、ジュピターは舞台が海となるとちょっと旗色が悪い。しかも嵐の中、無人島に置き去りにされて、すっかり風邪引き(他の2人は平気)。というわけで、今回は半ば安楽椅子探偵のようなジュピターでした。楽しげに海に出て行く友人たちを黙って見送るのが、けなげ。

      子供の頃は気付かなかったが、なんかこのシリーズ、もともとは嫌味なくらいに自意識過剰で自分の頭脳にものすごく自信を持ってるジュピターが、ほかの2人に敵わないという状態に陥るパターンがけっこう多い。結局、最後の最後で推理力を発揮して謎を解くのはジュピターなんだけど。

      The Secret of Skeleton Island (The Three Investigators)
      The Secret of Skeleton Island (The Three Investigators)
      〔1966年〕
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      Robert Arthur "The Mystery of the Vanishing Treasure" (Random House)
      ジュピター、ピート、ボブの3人組が活躍する少年探偵シリーズ "Alfred Hitchcock and The Three Investigators" 第5作。第3話と第4話が、実家を探しても見つからなかった。読んだ記憶はあるのになあ。図書館で借りたんだっけ? 20年も前のことなんでもう分からん。

      美術館の「子供優待日」だというので宝物展を見学に行った3人は、奇しくも宝石の盗難現場に居合わせることになる。厳重に警備された美術館のなかから、犯人はどうやって宝石の付いた黄金のベルトを持ち出したのか? さっそく捜査協力を申し出たジュピターだったが、子供の出る幕ではないとあっさり家に帰されてしまった。がっかりした3人のところに、アルフレッド・ヒッチコック氏から別の調査依頼が入る。友人の女性作家の自宅に、伝説の小人、ノームが出て悪戯をするというのだ。そんな話は当然、警察には相手にされなかったので、ヒッチコック氏に相談が持ち込まれたのだった。

      第1話第2話では幼い頃の怪我が原因で片足不自由だったボブが、この巻では先日から器具を外して歩けるようになったという記述がある。で、ロールスロイスは登場しない。30日間利用権が切れたんだっけ? おぼろげな記憶では、利用期限が切れた後でも使っていいことにしてもらえたエピソードが、どれかの話にあったような気がしてたんだけど。本書では警察に連絡できないために仕方なく絶体絶命の追いかけっこをやる羽目になる場面があるんだが、ロールスロイスなら自動車電話が搭載されているのですぐに通報できたはず(ケータイなんかない時代の話ですよ、これは)。もしかして、今回は話を盛り上げるために出てこないのか(笑)。

      しかし、第1話〜第4話までは邦訳が出たのに、この第5話の翻訳が出なかった理由って、なんとなく分かるなあ。これ、実は「日本人の男の子」が登場するんである。で、この男の子「タロー」が、なんつーか……。小柄でガキンチョのくせに普段からスーツにネクタイ、髪はぴっちり撫で付け、すごく言葉が丁寧で、自分の父親をやたらめったらに敬っている。で、このタローの父親のファースト・ネームが、なぜか「ササキ」。苗字じゃなく(苦笑)。大体にして、盗まれた黄金のベルトっていうのが、「古代の日本天皇が所有していた黄金とエメラルドでできた太いベルト」だって。うーん、違和感。こういうのを見ちゃうと、このシリーズに出てくる日本以外の国から来た「ガイジンのキャラ」も、それぞれの国の人が読んだらけっこう変なんじゃないかなあ、と勘ぐってしまいます。あと、日本関連以外にも、ネタバレになるので、書けないけど、ちょっとまずいかもなあって要素がちらほら。お話としては、ハラハラドキドキで面白いので、残念。ピートとボブが大活躍で、ジュピターがいじけるとこなんか、微笑ましい。

      Alfred Hitchcock and the Three Investigators in the Mystery of the Vanishing Treasure
      Alfred Hitchcock and the Three Investigators in the Mystery of the Vanishing Treasure
      〔1966年〕
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      Robert Arthur "The Mystery of the Stuttering Parrot" (Random House)
      "The Secret of the Terror Castle" のラストで次の事件として予告されていた、少年探偵トリオのシリーズ "Alfred Hitchcock and The Three Investigators" 第2作。

      いなくなったペットのオウムを探す手伝いを頼まれた3人組。ヒッチコック氏の友人である俳優が飼っていた件のオウム、その名もビリー・シェイクスピアの十八番芸は、「To-to-to be, or not to-to-to be.」と、つっかえながら『ハムレット』の一節を引用することらしい。調査を始めようとした3人は、同じ地域で、ビリー以外にも行方不明になったオウムがいたことを知る。こちらは、マザーグースの一節をわざわざ間違えて暗唱する、リトル・ボピープという名のオウムだった。

      この話は、英語特有の言いまわしを利用した暗号物なので、日本語版ではどんなふうに翻訳されてたのか、非常に気になっている。読んでみたいなあ、日本語版。私が生まれる前の時代の子供たちを対象にした本だから、余計に。当時の日本の子供は、今の子よりも、英語関係の知識はなかったはずだよね?

      このシリーズでなにが好きかって、探偵少年たちが、自立心旺盛で積極性にあふれてはいるものの、全然スーパーマンじゃないとこかも。そこがつまらんって言う人もいるかもしれないが。けっこう、ヘマやるんだよ。でも、3人で力を合わせて、なんとかしちゃう。偶然に助けられたら、人から賞賛されても素直に「偶然だったんです」と言えるのも偉い。で、本書での最後の「偶然」は、すごく愉快。

      あと、シリーズ全作(全部読んだわけじゃないけど、多分)を通じて、殺人事件を扱ったものが1つもないのも、好きかな。

      Alfred Hitchcock and the Three Investigators in the Mystery of the Stuttering Parrot
      Alfred Hitchcock and the Three Investigators in the Mystery of the Stuttering Parrot
      〔1964年〕

      邦訳:ロバート・アーサー『どもりのオウムの秘密』(河野徹・訳/日本パブリッシング)〔1969年〕絶版
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      Robert Arthur "The Secret of the Terror Castle" (Random House)
      子供の頃、すごく好きだった少年探偵シリーズ "Alfred Hitchcock and The Three Investigators" を、夏休みに実家に帰省したとき発掘して、数冊持ち帰ったのでした。これは第1話。

      ジュピター・ジョーンズ、ピート・クレンショウ、ボブ・アンドリューズは、カリフォルニア州ハリウッド近郊のロッキー・ビーチ市に住む仲の良い少年3人組。

      ジュピターがレンタカー会社主催のクイズに応募してロールスロイス(運転手付き)の30日間利用権を獲得したことをきっかけに、彼と2人の仲間たちは探偵団「The Three Investigators」を結成する。

      初事件として(一方的に)請負うことにしたのは、著名な映画監督アルフレッド・ヒッチコック氏が次の作品に使う「幽霊屋敷」のロケ・ハンティング。堅いガードを策略で突破し、ヒッチコック氏のオフィスに押しかけて半ば強引に契約を取り付けた彼らは、さっそく目星を付けた幽霊屋敷、通称「恐怖城」を見に行った。ところが調査を始めたとたん、脅迫電話はかかってくるわ、怪しいジプシーは訪ねてくるわ……。

      とにかく、3人のキャラ設定が好きだなー。幼児の頃に「デブ」が売りのお笑い子役としてTVにレギュラー出演していた経歴と、今でも太り気味な外見によるコンプレックスを、努力で磨いた明晰な頭脳でカバーするジュピター。運動神経抜群で性格もいいけど単細胞でちょっと怖がり、でも軽妙なトークが楽しいピート。小柄な痩せっぽちで片足不自由だけど、度胸があって情報収集能力に優れたボブ。誰も完璧じゃないし、特にかっこよくもないんだけど、だからこそ、この個性バラバラな三人が、抜群のチームワークを発揮するのが楽しい。

      しかし、この第1話で一番おかしいのは、チームのリーダー、ジュピターが、幽霊屋敷の謎を暴こうというのではなく、むしろ「本物のお化け屋敷だったら嬉しいなあ」というスタンスで調査を始めていることだ。彼が駆使する科学的なアプローチは、屋敷で起こる怪異現象が物理的に説明できないと証明したくてのものなのだ。わははは、子供が主人公じゃなきゃ、できない話かも。

      ストーリー的には、それほどものすごい展開ではなくて、とりあえずキャラクターを取り巻く設定の紹介、というかんじの1冊ですが、テンポに乗ってなかなか楽しく読めました。

      ちなみにこのシリーズ、アメリカでも一時絶版で、1990年代に入ってから徐々に復刊されていますが、現在売られているものでは、ヒッチコック氏が別の架空の映画監督に置き替わってリライトされているそうです。なんか権利的にまずいことでもあったのかな?

      The Secret of Terror Castle (Three Investigators, No 1)
      The Secret of Terror Castle (Three Investigators, No 1)
      〔1964年〕

      邦訳:ロバート・アーサー『恐怖城の秘密』(小津栄一郎・訳/日本パブリッシング)〔1969〕絶版
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      Dale Estey "A Lost Tale"
      まったくなんの予備知識もないまま古本屋で偶然手に取って裏表紙を見たら、マドレイン・ラングル、アンドレ・ノートン、ジョーン・ヴィンジ、エリザベス・A・リンという豪華面子の推薦コメントが目に入ったので、ついつい購入。

      これがこの著者のデビュー作であるようだ。多分日本では翻訳出てない。古書店系サイトで検索すると、他にも何作か書いてるみたいだけど、本書ともども絶版。ウェブでサーチかけても、この著者に関する情報、皆無。うーむ。今はもう書いてない人なのかな?

      第2次世界大戦中。イギリス統治下にある小さな島、マンでは、古代から受け継がれてきたケルト民族の伝統が、密かに継承されていた。巫女の素質を持つ島民の少女ブリジットは、古くから島に棲まう生き物《彼》との逢瀬を果たすため、本能の導くままに夜の森を歩いていたが、突然異変を感じる。ドイツ兵の青年が森に侵入していたのだ。母方からケルトの血による不思議な感性を受け継いでいたドイツ兵のロルフと、ブリジットとは、一瞬にして惹かれ合う。しかし、ロルフがマン島に潜伏していたのは、ある任務のためだった。父親のためのナチスの任務さえ完了すれば、そのままマン島に留まって母と同じ血統を持つケルトの民に加わる、と主張する彼に、ドルイドの長は、「両方を取ることはできない」と予言する。

      くらくらするような変な話。ドルイドの長が、実は部外者の目をごまかすために地域のキリスト教会の司祭をしている、という設定やら。自然を崇拝し共存するドルイドの長と、イングランドの政府間諜のエリートが互いを認め合って共同戦線を張る、という展開やら。移りゆく時代のなかで、頑強に機械類の使用を拒む年老いたドルイドと、便利なものは便利なものとして享受していく姿勢で、自動車や電話機を抵抗なく使いこなす若手ドルイドの対比、とか。

      しかし、ファンタジーと戦時物とスパイ小説がぐちゃまぜになったようなこの話、決して乱雑な印象を与えるわけではない。全体のトーンは、非常に厳粛。登場人物すべてが、《運命》に対する諦念を抱いているようで。諦念、というと言葉が悪いかな。運命に翻弄されるのではなく、静かに受け入れて、自分にできることをしていく、というかんじ。

      そんななかで、若いカップルの初々しさと、ふたりの存在が皆の運命を決する核となることを知りながらもそっと見守る周囲の大人たちのやさしさ、ドルイドの思想が生活の一部となったマンの民の、自然と調和した暮らしぶりの描写が、心地よい。

      ただちょっと不満を言えば、最後の最後で、ロルフ青年は、ナチスの科学者である父親とブリジットのどちらかを選ばねばならない状況に陥るんだが、結局いまいち、自分の意思では選ばないまま、すべてが終わってしまってるんだよな。

      ブリジットは、「彼は私を選んだ」と言ってるけど、なんとなく読み手である私の受けとめかたとしては、彼は状況と《運命》に流されたままで、事態は他の大人たちの犠牲と努力で片付いた面が大きいんじゃないかと。読み終わっても、この若者に対しては「きみ、もしかして最後まで状況把握してなかったやろ」とツッコミを入れたくなってしまうのだ。ドラマの流れとしては、彼にはもっとはっきりと自分の選択をさせてやってほしかったなあ。めちゃめちゃ過酷な選択だけど。

      A Lost Tale
      A Lost Tale
      〔1980年〕
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      + about this blog
       かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
       現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
       今後の実質的な更新はありませんが、コメント、トラックバックは受け付けています。