本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
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      はやみねかおる『怪盗クイーンはサーカスがお好き』(講談社青い鳥文庫)
      今回の主人公は「怪盗クイーン」。以前出た松原秀行との競作『いつも心に好奇心(ミステリー)』(講談社青い鳥文庫)で、名探偵夢水清志郎の新しいライバルとして初お目見えだったお方です(ただし探偵シリーズの大江戸編には「怪盗九印」というキャラクタが登場)。探偵は出てきませんが、暴走雑誌記者の伊藤真里さんはこっちでも飛ばしてます。

      今回のターゲットは「リンデンの薔薇」なる宝石。ところが謎のサーカス一座に獲物をかっさらわれて、思いがけなく勝負をすることに。

      ああ、もう「怪盗」とか「サーカス」へのロマンが詰まってますよ! 作者はきっと、こういうのがものすごく好きなんだなあ、というのがひしひしと分かる。

      ところで、『いつも心に好奇心(ミステリー)』で盗まれたコンピュータ・システム「RD」が今回から怪盗の飛行船「トルバドゥール」に組み込まれているんですが……「RDって、ラ、ラジェンドラ!?」と思ったのは私だけでしょうか。
      (註:ラジェンドラとは神林長平の「敵は海賊」シリーズに登場する宇宙船に搭載された辛口な人工知能)

      怪盗クイーンはサーカスがお好き (講談社青い鳥文庫)
      怪盗クイーンはサーカスがお好き (講談社青い鳥文庫)
      〔2002年〕
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      深町眞理子『翻訳者の仕事部屋』(飛鳥新社)
      プロ意識のかっこよさが詰まった、文芸翻訳の大御所によるエッセイ集。あちこちに掲載されたものが、かなり古いものまで収録されていて、それはそれで興味深い。

      深々と肯ける部分がたくさんあった。文芸翻訳とビジネス系の翻訳は一般認識としてはまるっきり別物ということになっていますが、けっこう共通の姿勢や心構え、方向性に基づく部分もあるんじゃないかなと思えた本。

      同時期に読んだ宮脇孝雄『翻訳家の書斎〜〈想像力〉が働く仕事場〜 』の感想文のほうでも、この本に言及しています。

      翻訳者の仕事部屋 (ちくま文庫)
      翻訳者の仕事部屋 (ちくま文庫)
      〔ちくま文庫2001年/親本1999年〕
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      橋本治『宗教なんかこわくない!』(ちくま文庫)
      橋本治は、私にとっては、もしかしたら「20世紀で一番頭のいい人」で、だけど彼は頭がいいから、決して宗教家のようになにかを断言することなんかない。彼の文章はのらりくらりと、はっきりいって悪文と言っていいほどに読みにくいけれど、反面、彼の思考を読者が追跡するには、この文体しかありえないとも思える。なぜなら、彼の思考は、あまりにも広範囲のものを一瞬にしてカバーしてしまうから。

      この『宗教なんか怖くない!』という本は、企画としてはなんだかとっても、イロモノっぽいんだよね。例の宗教団体が、とんでもない事件を起こしてとんでもない騒ぎを引き起こした直後に書かれた本だ。そして多分、橋本治は、この本を「イロモノ」的なものとして見る人間がいることを、ハナから承知のうえで、この本を書いてる。

      だからこそかもしれないけど、もうこの人には何を言っても、こちらが彼の術策に嵌っている、というかんじになってしまうんだよな。追いかけても追いかけても、この人は自分の論理に穴をあけない。というか、わざと穴をあけておいて、そこに誘い込まれた者に「実はね、穴の底には、こんなものを敷いて補強してあったんだよ、だからこれは本当は穴じゃないんだ」と明かしてくるみたいな。

      うーん、何書いてんだか、自分でも分かんなくなってきた。

      だって、分かんないんだもん。頭の良くない読み手としては、読了しても、なんか分かったような、分かんないような、まるめこまれたような、突き放されたような、宙ぶらりんな感じが残る。そして、この感じこそが、著者の意図したものなのではないかと、ひそかに思ってみたりもするのだ。

      結局、たたき込まれたメッセージは、ただ1つ。「自分で考えろ! 本読んで分かろうとなんかするんじゃない!」

      そういうことじゃないのかなー。

      あ、この本の中でちょっと橋本治が「いずれ書きたい」と言っていたお釈迦様の本っていうのは、めちゃくちゃ読んでみたいぞ。読んでみたくてたまらないぞ。絶対、面白いと思うんだ。

      宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)
      宗教なんかこわくない!
      〔1999年/親本1995,マドラ出版〕
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      馳星周『不夜城』(角川文庫)
      普段の私の守備範囲からは、大幅に外れているんです。が、周りでは非常に評判がよろしいし、第一、この度あの金城武主演で映画化されて、もうすぐ公開というではないですか。そのせいで、こんなに早く文庫化されてしまったではないですか。これは、映画上映が始まる前に、ぜひ読んでみなくてはっ!……というわけで、買ってきたです。ええ、金城くんのファンですから、私は。で、一体どんな役をやるんだ、彼は?どきどきどき……とページをめくったわけです。

      主人公は、台湾人と日本人のハーフ、すなわち“半々(パンパン)”である劉健一。中国系マフィアが暗躍する新宿歌舞伎町で、故売屋をやっている。3日以内に、かつての相棒で同じ半々の呉富春を捜し出し、上海マフィアに引き渡さねばならない。自分を上海マフィアに売ったのは、かつての後見人、台湾人裏社会のドン楊偉民。健一はどこにも属さない。誰も信じない。いや、この物語では、誰しも、裏切ったり裏切られたり、そんなことばかりなのだけれど。

      こういうの、ハードボイルドっていうの? たしかにハードではあるけれど、健一には私が思ってたハードボイルド系キャラのような、自分なりの行動規範や美意識なんてものはないに等しい。健一は、日本人でもなく、台湾人でもなく、宙ぶらりんのまま、ただ生き残るためだけに、小器用に生きている。大局を動かすような大物の悪党でもないし、かといって正義感を杖にして立ち上がる英雄でもない、小心者のアウトローだ。こういう男がね、一番タチが悪いんだよ。心のなかは一番、荒んでいるんだよ。守るべきものが何もなくても、守りたいと思えるものがあっても、この男はきっともう、この暗い街から逃れられない。裏切り裏切られることを前提としてしか生きられないから。何があっても、何も変わらない。生死をかけた3日間も、終わってしまえば、ただそれだけのこと。

      一気に読んで、読み終わったあと、ぐったり疲れた。迫力あるの。迫ってくるの。でも、なんだかこちらから力を奪っていくようなかんじ。厳しいんだよな。

      でね。主演ってことは、この健一役を、金城武がやるんだよね? ぜーったい、ミスキャストだと思うぞーーーっ!!!(ファンであっても私は冷静)

      いや、もしこの役で迫真の演技ができたら本当に偉いと思うけど、でもその時は、私の思う「金城くんの魅力」というものは完全に殺されてしまっているはずだ。いや、主観だけどさあ。駄目なんだよ、金城くんにこういう役やらせちゃ駄目だよ、うーうーうー。「現実にも台湾人と日本人のハーフ」というだけで安直に抜擢されたんじゃないの? もう私、のた打ち回っちゃう。あうー。すんごい「寝ぼけた」かんじの劉健一になるに違いないぞ。こういう荒廃したシャープさのあるキャラに金城くんを持ってくるのはちょっとどうかと思うなあ。大体、金城くんの年齢に映画の中の設定を合わせているとすると(金城くんがいくらヒゲとか生やしたって、原作通りの「三十代半ば」で通用するとは思えん)、ストーリーの説得力にもかなり無理が出て来ないか? そのへん、どうしているんだろう?

      でも、結局は怖いもの見たさで観に行くんだろうなあ……映画版「不夜城」。なんか角川書店に踊らされてるみたいな気がしてきた。いや、映画を見てみないことには何とも言えないわけですが、「金城武・新境地を開く! 新たな魅力発見!」となる可能性もなくはないんですが、しかし少なくともこれを書いてる時点(1998年6月初頭)で、私はあまり期待はしておりません、はい。期待しないで観るほうが、かえって「思ったよりいいじゃん」ということになるかもしれないし(健気)。

      しかし……果たしてこれは読書感想文、と言えるんだろーか。でも、とにかくこの本を読んで一番最初に頭に浮かんだのが、これだったんだもん。えーと、金城武が映画版に主演するということさえ考えなければ、小説自体は、好き嫌いを超越して、ただただすごいと思いました。どうも失礼。

      不夜城 (角川文庫)
      不夜城 (角川文庫)
      〔1998年/親本1996〕
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      はやみねかおる『踊る夜光怪人』(講談社青い鳥文庫)
      名探偵夢水清志郎事件ノートの第5作。暗号物ですな。苦手なのよ〜(笑)。ってわけで、ぜーんぜん何も考えずに「ほえー」と口を開けたまま読み終えました。あ、でも面白かったあ。色々解説してくれてあって暗号初心者には親切(ってことは私の暗号物経験値は小学生レベル?)。でもそういえば小学生の頃は、子供向けホームズ本の「踊る人形」でわくわくしてたんだったよなあ(遠い目)。ああ、よみがえる子供時代! そうそう、暗号って最近は敬遠してたけど、結構面白いんだったわ。

      おねーさん好みのかーいいレーチくんが再登場して大活躍の一冊。ふふふ、成長が楽しみだ(おいおい)。このまま萎縮することなく、すくすくと育ってほしいものです。自分の中学生時代をオーバーラップさせつつ思うのだけれど、こういう世間的な物差しでは計れない子が、学校以外の場に「夢水清志郎」という、同じく世間的な物差しとは関係ないところで生きてる“大人”を見出して、しかも憧れの対象とすることができたのって、何だかとても“救い”のあることのような気がするんだなあ。子供は、いつか大人にならなきゃならないのだから。

      そうそう、本編が始まる前についてる登場人物紹介のページを見ると、第1作の犯人(!)である“伯爵”(←ネタバレじゃないぞ)や、第2作で私好みの台詞を吐いてくれた美人教師の真木先生、第4作でいい味出してたスピード狂編集者の伊藤さんなどなどが再登場してオールスターキャストの様相なんですよね。彼らは一体この物語のなかでどんな役割を果たすのかってとこも要注目、なのだ。

      ああ、それにしても、夢水清志郎みたいな、ぽーっとしてて天然ボケなくせに実は天才でやるときはやるのよってパターンはやっぱ好きですねえ、子供の頃から。唐突ですが、私はこのシリーズを読み終わると毎回

      「みんな、幸せになろうねっ!」

      と脈絡もなく思ってしまうのでした。

      かててくわえて、こういうのを小学生のうちに読んで「ミステリ読み」の素地ができた子がどんどん育ってくれると、おねーさんは非常に嬉しい。

      踊る夜光怪人―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)
      踊る夜光怪人―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)
      〔1997年〕
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      はやみねかおる『魔女の隠れ里』(講談社青い鳥文庫)
      名探偵夢水清志郎事件ノートの第4作には、3つのお話が収録されています。雑誌の紀行文シリーズの執筆を依頼された夢水清志郎。1話目での行き先は不思議な伝説の残るスキー場。子供たちが次々に消えてしまったのは何故? 幽霊が描いたかのようなシュプールは一体何? これから準レギュラーとしてパワーを発揮してくれそうな暴走雑誌編集者、伊藤真里さんも登場。こーゆー人、好きです(笑)。彼女の車には乗りたくないけど。

      表題作に入る前には、息抜き的なほのぼの掌編「羽衣母さんの華麗な一日」をどうぞ。(しかしこの話についてるイラスト……なんか違うんじゃないか?)

      そしてお待たせしましたの表題作「魔女の隠れ里」は、再び紀行文のための取材(?)旅行編。今回夢水探偵がやってきたのは、過疎化の進む山村、桜のきれいな笙野之里。ここで村おこしのために企画されている「推理ゲーム」のアドバイザーを頼まれたのだ。しかし到着するなり不思議なことが相次いで、推理ゲームは「魔女」と名乗る謎の人物によって進行させられていく。

      うーむ。これは……うまいなあ。ある意味、この本の存在自体がトリックだな。桜の里の雰囲気がなかなか幻想的でいいかんじ。後、夢のなかで行なわれる事件と直接関係ない謎解きっていうのが、なんか贅沢!って思うんだよねえ。

      はっきりとは解決されないで暗示のまま終わった謎ってのがあるんだけど……これ、なんでこういうふうにしてあるのかなあ。私の思うには、これを明るみに出しすぎちゃうと、今までの“悪人じゃない犯人”と“ほのぼのエンディング”のはやみねワールドが崩れるから。だから一滴の毒として、ちょっとほのめかす程度で。(ちなみに、この謎の解決編が、はやみねさんの公認サイトにあるのを発見。)

      魔女の隠れ里―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)
      魔女の隠れ里―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)
      〔1996年〕
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      はやみねかおる『消える総生島』(講談社青い鳥文庫)
      名探偵夢水清志郎事件ノートの第3作。映画のロケ地となった離れ小島、総生島にあるのは、80億円かけたと言われる豪邸「霧越館」と、“鬼”にまつわる言い伝え。本土との行き来をする唯一の手段だったクルーザーは炎上し、はからずも13人という人数になってしまった一行は島に閉じ込められた。やがて島では人が消え、山が消え、館が消え、島そのものも……。

      シチュエーション。トリック。所々に見られるウケ狙い(?)な固有名詞(こういうとこでウケるのは本来の読者である“小学生”ではないような気もするが)。僭越ながら、はやみねさんのお好きなミステリのタイプとか、はやみねさんのミステリの楽しみ方って、きっとこれこれこういうかんじね……と思いを馳せてしまうような一作だと思いました。

      またしても、ちょっと考えさせるテーマが顔を出すんだけど、あくまでもストーリー上はミステリ主体で、決して押し付けがましくはない。これを読んだ子供たちが、いつかふと思い出すこともあるかもしれない、という程度なのが、私には好ましい。

      ちなみに、珍しく?夢水清志郎が、人知れず“骨のある”男でもあるところを見せてくれるエンディングなのでした。

      消える総生島<名探偵夢水清志郎事件ノート> (講談社文庫)
      消える総生島<名探偵夢水清志郎事件ノート> (講談社文庫)
      〔文庫版2007年/1995年〕
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      はやみねかおる『亡霊(ゴースト)は夜歩く』(講談社青い鳥文庫)
      名探偵夢水清志郎事件ノートの第2作。前月読んだ第1作でほのぼのしてしまったので、続編も読むことにしたのである。始まりは、『バイバイ スクール』の直後に読み始めたのはまずかったか?……と一瞬思った、“学校に伝わる不思議伝説”ネタ。

      主人公の少女たちが通う虹北学園で、壊れているはずの時計塔の鐘が鳴り出した。そして“亡霊(ゴースト)”と名乗る謎の人物からのメッセージ、夜中のうちに校庭に描かれた巨大な魔法円、と不思議は続く。果たして「時計塔の鐘が鳴ると人が死ぬ」「夕暮れどきの大イチョウは人を喰う」「校庭の魔法円に人がふる」「幽霊坂に霧がかかると亡霊がよみがえる」という4つの伝説は、現実となってしまうのか。

      そんな騒動が起こる一方で、「わたし」こと亜衣ちゃんたちは学園祭の準備にてんてこまい。なんせ今年は、クラス一の変人、麗一(通称レーチ)が何を血迷ったのかいきなり実行委員長に立候補したうえに、亜衣を強引にアシスタントに任命してしまったのだから。

      このレーチというのがねえ、反逆児で問題児で亜衣には「野蛮人」なんて呼ばれているけど、なかなかいい子なのよ。おねーさん、好きだわあ。

      で、えーと、ミステリ部分の話をまだしてなかったのか。というか、今回は正直言って、あんまりミステリとしての仕掛けが印象に残ってないんですよね。このトリックを実行するのはなかなか大変だわねえ……という感想を抱いた記憶はあるんですが。まあ好みの問題かな。「小粒でピリリ」みたいなトリックがシュミな私の言うことだしなあ。というか、亜衣ちゃんたちやレーチの学園生活を楽しみつつ自分の学生時代など思い出しているうちに一気に読み終わってしまったというかんじで。

      前作『そして五人がいなくなる』に比べると、ちょっと“犯人”の動機は重い。自分が学校に通っていた頃に感じていた「もどかしい」気持ちを思い出す。でも、根っこのところは多分同じだね。子供たちに注ぐ視線が。発展途上な子供たちを、大人はどんなふうに見守っていけばいいのか。そんなことを、夢水探偵は、へらへらとした表情の向こう側で、実は結構真剣に考えているのかもしれない……もしかしたら。

      ってわけで(←接続関係が意味不明だが)、前回に引き続き、この本のなかで私が好きな台詞を一つ。校則なんか糞食らえの自由奔放な問題児であるレーチに、数学の美人教師、真木先生がいう言葉。

      「あのね、中井くん。一つだけ、おぼえておいてほしいことがあるの。(中略)先生たち――ううん、先生だけじゃない――すべての大人には、きみたちのような子どもの時代があったってことを。」

      ふふふ。そうなのさ。大人なんて、子供が大きくなっただけなのよ。自分がコドモの頃は、理解不可能な生き物みたいに思っていたけれど。

      でも本当は、“かつて子供だった”ことを忘れちゃってるオトナだって、世の中には結構いるんだよね、きっと。

      亡霊は夜歩く<名探偵夢水清志郎事件ノート>
      亡霊は夜歩く<名探偵夢水清志郎事件ノート>
      〔文庫版2007年/親本1994年〕
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      はやみねかおる『そして五人がいなくなる』(講談社青い鳥文庫)
      わたしたちの町に、名探偵が引っ越してきたの!

      ……という冒頭部分。なんだかわくわくさせられます。一部で妙に評判のいい、はやみねかおるのジュニア向け(小学上級から、だそうだ)ミステリ。私は初めて読みました。夢水清志郎シリーズ第1作。

      もとは大学教授だったという名探偵・夢水清志郎は、不思議な人。年齢不詳、ものぐさ、忘れん坊、食いしん坊、常識知らずでマイペース。でも自分が「名探偵」であるということに関しては、おっそろしいくらい自信過剰。だから遊園地で子供たちが消えてしまうという怪事件に遭遇しても「ぼくはこの事件を解決する!」って言い出して、まるで駄々っ子みたいだなんて、中学1年生の「わたし」にまで思われてしまうのです……。

      なるほどなあ。確かにミステリとしては子供向け(でも「子供騙し」には堕ちていないかな)だ。語弊を招く言い方かもだが、児童文学史上に残る名作だとも思わない。しかし「物語」としては、オトナの人にも(下手するとオトナの方が余計に)ほろりとくるものがあるのではないでしょうか。“犯行”動機とかは、結構すぐに読めちゃうんだけど、ほんわりと温かい解決編だね。

      「いまの子どもと昔の子どもと、どっちが幸せだと思う?」
      わたしがきくと、教授はあっさり答えた。
      「どっちも幸せだよ。子どもは、いつの時代だって幸せなんだ。また、幸せでなくちゃいけないんだ。」

      うるうる。わたくし、この箇所で不覚にも目の奥がつんとしました。そう、幸せでなくっちゃね。子供も、そして大人も。私が小学生の頃にこの本を読んだら、きっと、おそらく、絶対
      「私の町にも、夢水清志郎が来ないかなあ」
      って、夢見ていたにちがいない。

      ……とは思うんだけど、でも実は、この本を読んだ「いまどきの小学生」はどういうリアクションをしているのかという「生の声」を誰かレポートしてくんないかなあ、なんてことも思う。大人になってしまった私がほろほろ来たようなところで、現役の小学生にはあんまり引っかかってほしくないな、正直言って。今は無邪気に明るく謎解きや“教授”こと夢水探偵の茫洋としたキャラクターを楽しんでいてほしい。そして自分が大人になったとき、何かの折に彼のこの台詞を思い返してみてほしい。

      そして五人がいなくなる―名探偵夢水清志郎事件ノート
      そして五人がいなくなる―名探偵夢水清志郎事件ノート
      〔1994〕
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       かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
       現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
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