本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
著者名インデックス(あ行)
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乾くるみ『塔の断章』(講談社ノベルス)
実はずいぶん前に買うだけは買ってあったのだが、引越しなどを経て、どこにしまったのか分からなくなってしまい、読めずにいたもの。

カバー折り返しの「著者のことば」に、「ジグソーパズルを組み立てる」ように読めと書いてあり、最初は「それって要するに、キャラ萌えするなよってことかい?」と見当違いな受け止め方をしていたのだけれど、読み始めて納得。時系列バラバラにいろんなエピソードが語られる、まさしくタイトルどおり「断章」ばかりの作品なのだ。

とはいえ、今までに読んだこの著者の作品のなかでは、ある意味、一番「常識的」で、その点は拍子抜けかも(また「ど、どう反応すれば!」と固まる羽目になるんじゃないかと、かなり身構えていた)。計算の行き届いた、端正な造り。

塔の断章 (講談社文庫)
塔の断章 (講談社文庫)
〔文庫2003年/親本1999年〕
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大崎善生『聖の青春』(講談社文庫)
難病と闘いながら道を極め、29 歳で夭折した天才棋士についてのノンフィクション。

あれ、この人って、竹本健治の智久シリーズに出てくるライバル天才棋士「桃井くん」と、すごくイメージがダブるよ? 体形とか、余人にはとっさにトレースできない常識はずれな思考パターンとか、風呂嫌いで少女漫画好きなところとか。

もちろん、桃井くんは激しくデフォルメされた一種のギャグキャラなので、違う部分もたくさんあるんだけど。そういえばどれかの本の後書きで、竹本氏が桃井くんには実在のモデルがいる、というようなことを書いておられたような? それがこの、村山聖さんのことだったのだろうか。健康な身体を得てのびのびと生きている、パラレルワールドの村山さんってかんじですね、桃井くんは。そう思うと切ない。

聖(さとし)の青春 (講談社文庫)
聖(さとし)の青春
〔文庫2002年/親本2000年〕
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小野不由美「悪霊」シリーズ(講談社X文庫)
稀少な初期シリーズやコミックス版まで貸してくださる奇特な方がいらっしゃったので一気読み。

現在入手可能なのは、ホワイトハートに移って新シリーズとして再スタートした『悪夢の棲む家〜ゴースト・ハント〜(上)(下)』だけかな? これのあとがきでは、ティーンズハートで展開していた旧シリーズにおいて、書き手に対する制約がどれほど多かったか、という話が炸裂しており、よほどストレスだったのだなあ、というかんじ。

でも若い頃から、お話の組み立て方は上手かったのね。これだけシリーズ化するほど、10 代の女の子の心をつかめたわけだし。大人が読んでも、伏線などきれいに張ってあって、かるーく楽しめた。コミックス版(いなだ詩穂『ゴーストハント』講談社コミックスなかよし)も、それぞれのキャラクターがとても素敵に描かれていて、いいかんじです。ところで、ティーンズハートのほうは、タイトル似すぎてて、読み終わったあとでもどれがどれだか、とっさにはさっぱり分からんので、簡単にメモしておこう。

悪霊がいっぱい!? (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊がいっぱい!? (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1989年〕
シリーズ第 1 作。ヒロイン麻衣が通う高校で、取り壊しが予定されている旧校舎に異変が起こり、渋谷サイキック・リサーチ(SPR)とやらに所属する心霊研究員がやってくる。麻衣はアクシデントにより、SPR の所長「ナル」のアシスタントを勤めることに。

悪霊がホントにいっぱい! (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊がホントにいっぱい! (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1989年〕
SPR のアルバイト要員として正式に採用された麻衣。今度の出張先は、ポルターガイスト現象が起こる古い洋館。アンティーク・ドールが焦点となり、幼い子供の命が狙われる。

悪霊がいっぱいで眠れない (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊がいっぱいで眠れない (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1990年〕
ある高校で相次ぐ怪現象。背景には ESP 騒動が。

悪霊はひとりぼっち (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊はひとりぼっち (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1990年〕
後にレギュラー・メンバーとなる安原くん初登場の巻。コックリさん(?)の話。

悪霊になりたくない! (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊になりたくない! (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1991年〕
ナルの師匠、森まどかさん初登場の巻。増改築を繰り返した洋館で起こる怪奇現象。政界の大物が秘密裏に集めた霊能者たちのなかに、麻衣たち SPR の面々も加わることに。

悪霊とよばないで (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊とよばないで (講談社X文庫―ティーンズハート)
〔1991年〕
臨海の断崖にたつ日本家屋。ナルが憑依され意識を封じられたため、残りのメンバーで対処することを余儀なくされる。

悪霊だってヘイキ!〈上〉 (講談社X文庫―ティーンズハート) 悪霊だってヘイキ!〈下〉 (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊だってヘイキ!〈上〉 (講談社X文庫―ティーンズハート)
悪霊だってヘイキ!〈下〉 (講談社X文庫―ティーンズハート)
第 1 部最終話。霊によって廃校に閉じ込められたメンバー。SPR、ナルの正体、そして第 1 話からの謎の答が明かされる。

悪夢の棲む家 (上) ゴースト・ハント 講談社X文庫―ホワイトハート 悪夢の棲む家 (下) ゴースト・ハント 講談社X文庫―ホワイトハート
悪夢の棲む家 (上) ゴースト・ハント 講談社X文庫―ホワイトハート
悪夢の棲む家 (下) ゴースト・ハント 講談社X文庫―ホワイトハート
〔1994年〕
ティーンズハートからホワイトハートに移って、語り口も一人称から三人称に変更したシリーズ第 2 部 1 作目。母娘が格安で手に入れた念願の一軒家には、どうもおかしなところが……。旧シリーズを知らない人への紹介も兼ねているらしく、オールキャラ登場でにぎやか。
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鳥飼否宇『昆虫探偵―シロコパκ氏の華麗なる推理』(世界文化社)
タイトルに惹かれて購入。ほら、うちのサイト名がサイト名だし。

突然、人間からヤマトゴキブリになってしまった主人公が、クマンバチである探偵の助手となり、オオクロアリの刑事などとともに、さまざまな事件に遭遇する連作短編集。

虫の世界の事件なのに、つい人間の論理を当てはめてしまい、周囲にたしなめられる主人公がおかしくも哀しい。虫の生態をよく知ってないと解けない事件ばかりなので、読者は謎解きをしようとせず、ひたすら読み進むがよろし。各作品のタイトルがよいねえ。「蝶々殺蛾事件」とか、「生けるアカバネの死」とか。

昆虫探偵 (光文社文庫)
昆虫探偵 (光文社文庫)
〔文庫2005年/親本2002年〕
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井辻朱美『幽霊屋敷のコトン』(講談社X文庫ホワイトハート)
先祖代々、継承されてきた「幽霊屋敷」の現在の管理人をつとめるコトンの、幽霊たちと過ごす平和な日々に、青年新聞記者や霊能研究家との出会いを通じて徐々に訪れた変化の物語。

若い娘でありながら、祖先の幽霊たちとまるで「隠居者」のように暮らすコトンの浮世離れっぷりに、妙な説得力が。だからこそ、「私はまだ若いのだ」と気付くくだりが、鮮烈。

しかし徐々に外の世界に目を開いていきつつも、本質的な部分を変化させないコトン(それはつまり、傍目からは「変わり者」でありつづけることを意味するだろう)に、なんとなく安心した。読み終えて残るのは、奇妙な捩れを残した不思議な爽やかさ。

幽霊屋敷のコトン
〔1992年〕
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太田忠司『ミステリなふたり』(幻冬舎)
敏腕刑事である妻が家庭に持ち込む不可解な事件を、お料理上手な夫が解き明かす。去年の 6 月に読んだ芦原すなお『ミミズクとオリーブ』(創元社推理文庫)の男女を逆転させてポップなコメディ風味にしたような設定ですな。

個々の謎解きは楽しめたのですが、コメディ部分が私には向いてないかんじで、ごめんなさい受け付けませんでした。最終話の落ちとかも、もうちょっとあざとさを押さえ気味に行ったほうが好感度高いと……いや、この「ベタさ」を楽しむのが正しい読み方なのかも。パズル部分は小粒ながらすっきりときれい。

フリーのイラストレーターをやりつつ家事全般をこなす夫が、家のことをきちんとやるために仕事量をセーブしているというのは、大変耳の痛い話(笑)。

ミステリなふたり (幻冬舎文庫)
ミステリなふたり (幻冬舎文庫)
〔文庫2005年/親本2001年〕
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乾くるみ『マリオネット症候群』(徳間デュアル文庫)
この作者の本って、どれを読んでも「元ネタはあれ?」と思ってしまうのは、やはり当人が狙ってやっているのだろうか。

『匣の中』の元ネタが『匣の中の失楽』(竹本健治)であるのは当然だけど、『J の神話』でも大御所の SF 某短編を思い出したし、この『マリオネット症候群』でも別の作家の SF 中編と同じシチュエーションが。

ただ、この人にかかると、その同じシチュエーションが、ぐぐっとブラックになってしまって、むしろその印象の違いを楽しんでいるので、一向に構わないのですが。今回のこれはまた、なんとも言えない、いびつな笑いが散りばめられて。

マリオネット症候群 (徳間デュアル文庫)
マリオネット症候群 (徳間デュアル文庫)
〔2001年〕
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岡田斗司夫『フロン』(海拓舎)
6 月に読んだ本が少なかった理由の 80 % くらいを占めてるんじゃないだろうか、この本。ページ数的には 1 時間程度で読めてもおかしくない薄さと活字の大きさなのに、なぜか通読するのに 2 週間近くかかってしまった。

フロンとは婦論であり、夫論であり、父論なのだそうだ。新しい夫婦像とか、家庭像とかを提示しようとしている本、という区分けでいいのかな? ターゲットになっている読者層は「子供のいる夫婦(特に妻)」なので仕方ないのだが、とにかく読んでて実感を伴わない話が多くて。というか、「夫をリストラ」のキャッチコピーで有名なこの本だけど、読んでみたら「うちの場合、リストラされるべきなのは、夫じゃなくて妻だなあ」というのが正直なところ。あ、だから読んでて逃避しちゃったのかも? ぶるぶる。

やっぱり想定された読者でない私らの場合、子供がいないから、好き勝手にやっててもお互い了解さえしていれば大きな問題が生じないんだよなあ。「家庭は安らぎの場ではない」と書いてあるけど、現実に私、安らいでるしー? みたいな。それは、私が状況的に(つーか配偶者的に?)恵まれているということもあるのだと思うけど。私の場合は一人暮らし時代よりも、結婚して一つの住居を二人でシェアしてからのほうが、確実に家事に取られる時間は半分あるいはそれ以下に減ってるんだけど、どうやら世間的にはそう単純計算なものじゃないらしいので。ところで夫は、どう思っているのだろうか。実はこの本に出てくる女性たちのように「家庭は安らぎの場ではない、もう一つの職場だ」と考えていたりとか、するのだろうか。どきどき。

ちなみに実は私、20 歳くらいまでは、この本で提唱されているのにかなり近い形態の実質的に「夫が家庭からリストラされた」環境で育ってるんだけど(仕事の関係で 1 年の 70 % くらいは父親が日本国内にいなかった)、そんないいもんじゃないよ、うん。まあ、選択肢としてこういうのもアリですよね、という提案として受け止めることは可能かもしれないけど。

フロン―結婚生活・19の絶対法則 (幻冬舎文庫 お 26-1)
フロン―結婚生活・19の絶対法則 (幻冬舎文庫 お 26-1)
〔幻冬舎文庫2007年/親本2001年〕
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乙武洋匡『五体不満足 完全版』(講談社文庫)
数年前のベストセラーに、その後のことを少し加筆したもの。親本が出た当時は、自分のサイトの掲示板でもちらっと話題に上ったにもかかわらず、読みそびれてしまっていた。そのときの掲示板では、ご自身も障碍者でいらっしゃる方が、どうしても「乙武さんは恵まれているのだ」と感じてしまう……というような発言をされていたように思う。

その辺の問題は、著者本人も承知していたようで、今回の加筆部分では、インタビュー等において「僕は」という主語で発言した内容が「障害者は」と一般化した文脈に置き換えられて報道されてしまったことに対する当惑、などが綴られていた。親本では、胴体だけの体が車椅子に乗っかっている衝撃的な写真を表紙に持ってきていたのが、この文庫版で乙武氏のことを知らなければどうということもない顔写真のみの表紙になっているのは、そういった嫌な経験が反映されているのだろうか?

本の中身は、全体的にとても読みやすく、特に前半部分の話の進め方など、とても巧い。そしてなんというか、本当に「ちょっと文章に自信のある普通の大学生」、という文体になっていて、それがこの本の場合は一層、効果を上げている。

確かに、この著者は“恵まれている”のかもしれない。前向きで賢明な父母に恵まれ、教師に恵まれ、才に恵まれ、経済的に恵まれ、身体上のハンディを受け入れて明るく強く生きて来られた 20 年あまりの人生。けどそれは、誰もがどこかで、他の誰かに対して持っているごく普通の「優位性」と同じこと、だと言いたいのだろうなあ、この人は。そしてそれは多分、正しい。

スポーツライターとして働き始めたときに「個性のない文章」と評されて喜んだ、というくだりは、ものすごく共感しました。私もどっちかというと、仕事で使う文章については、そういう考え方をするタイプ。

色んな意味で「若さ」を感じた 1 冊でした。

五体不満足―完全版 (講談社文庫)
五体不満足―完全版 (講談社文庫)
〔2001年/親本1998年,『五体不満足』〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
 現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
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