本の虫

虫干し読書録

こ ん な 本 を 読 ん で い た 。
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ロバート・シルヴァバーグ編『ファンタジイの殿堂 伝説は永遠に・3』(ハヤカワ文庫FT)
4つのお話が入っており、1作終わるごとに別の本に浮気してしまって、なかなか全部目を通せなかった。ちなみに、このアンソロジー・シリーズの1冊目と2冊目は読んでません。

収録されているのはすべて、別々のファンタジー小説の番外編で、知ってるシリーズ2つと、知らないシリーズ2つ。知ってるほうが、ロバート・ジョーダンの「時の車輪」(第2部の途中まで読んだ)とル=グインの「ゲド戦記」(一応全部読んだけど何故か第4巻が記憶に残ってない)、知らないほうがタッド・ウィリアムズ「オステン・アード・サーガ」とテリー・プラチェット「ディスクワールド」。

知らないシリーズの番外編というのは、ちょっとツラいものがあるかなあ、と思ったのだけれど、むしろ初耳の作者による2作のほうが、読みやすく感じました。それはそれでちょっと哀しくないこともない。ただ、だからと言って、面白かった2作の本編を探して読みたいとまでは(今のところ)思わないんだよなあ。あと、面白かったうちの1個(テリー・プラチェット「海は小魚でいっぱい」)は、キャラクターの楽しさで読んだかんじ。ファンタジーじゃなくてもいいなあ。意地悪ばあさんというのはツボなんです。

そもそもこれを買ってきたときのお目当ては、アーシュラ・K・ル=グインの「ゲド戦記」番外編、「ドラゴンフライ」だったんですが、私はどうも、古代・中世っぽい世界が舞台のファンタジーのなかで、現代のこっち側の世界っぽい思想(ジェンダーの問題とか)が前面に出てきて物語中で論議されちゃうのが、ちょっと苦手みたいだ。

えーと、物語の水面下にあるのは、いいんですよ。ただ、登場人物のセリフで言われちゃうのは、かなり苦手かも。逆に言えば、中世以前っぽい世界が舞台である限りは、登場人物のセリフが多少差別主義っぽくてもそれが自然な流れならオッケー。たとえばトールキンの女の人の扱いなんかは、いまどきの感覚からするとかなり古いよね。C・S・ルイスの「ナルニア」も、人種差別撤廃に取り組んでいる人が読めばかなり問題アリかも。やっぱり「政治的に正しくないから許せん」と思う人はいるだろうなあ。でも私は、それはそれとして許せちゃうんですよ。真面目にあれこれ考えてる人には怒られるかもしれないけど。

原書:Edited by Robert Silverberg "Legends: Short Novels by the Masters of Modern Fantasy" (1998)

伝説は永遠に―ファンタジイの殿堂〈3〉 (ハヤカワ文庫FT)
伝説は永遠に―ファンタジイの殿堂〈3〉
〔斉藤伯好、小尾芙佐、金子司、矢口悟・訳/2000年〕
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有栖川有栖・篠田真由美・二階堂黎人・法月綸太郎『「Y」の悲劇』(講談社文庫)
エラリイ・クイーンの『Yの悲劇』にちなんだ競作集。意図してのものなのかは分からないけど、どの人の作品も「お馴染みのキャラクターを使ったダイイング・メッセージ物」になっているので、全体としての統一感が出ている。『Yの悲劇』って、別にダイイング・メッセージ物ではないんだけど、クイーンに寄せてってことなら、これでいいのかな。

「あるYの悲劇」有栖川有栖
エレキギターで撲殺されたロッカー少年が、「Y」の文字を壁に書き残していた。火村先生と作家アリスもの。このコンビが出てくる長編は好きなのですが、それは多分、このふたりのキャラクターに魅力を感じているから。で、トリックが主眼であっさり終わってしまう短編は、物足りなく感じてしまう、と。今回のこれも、なんとなく「スマートでない」という印象を受ける。なぜだろう。

「ダイイングメッセージ《Y》」篠田真由美
語り手の少年は、建築探偵シリーズの彼ですね。そうか、本名こういうのだっけ(すみません忘れてました)。なかで描写される一人芝居「鏡の中のアリス」が、かっこいい。最近読み返しているせいかもしれませんが、この劇だけ楠本まきの絵で観たいなあとか思いながら読んでました。ってわけで、雰囲気は一番。建築探偵シリーズがお好きな方なら、押さえておくことをおすすめします。

「『Y』の悲劇――『Y』が増える」二階堂黎人
タイトル中の1つ目の「Y」は実際のページ上では傾斜して印刷されてます。登場人物が読者に向かって語り掛けるメタメタ小説。ここに出てくる皆さんは、私は読んでない「奇跡島の不思議」という作品のキャラクターらしいです。そっちと合わせ読むと面白おかしいのかもしれないんですが、正直言ってピンと来ませんでした。本編を読んでれば、また違ったのかもしれませんが、一読しての感想は「うーん、もしかしてこれって、勝負投げてないか?」というものでした。すみません出直してきます。

「イコールYの悲劇」法月綸太郎
エラリイ・クイーンへのオマージュという点から見れば、これが一番、この本にふさわしい作品かもしれません。ネタ自体は日本を舞台にしていればこそのものなのに、全体の雰囲気がものすごくクイーンぽい。実はちょっと納得いかないところもあるんですが。あのダイイングメッセージより、もっとずっと簡単な犯人を指し示すやり方があったはずなのに、それをしなかったのはなぜか、というところで(ああ私、なんか読み逃してる?)。

全体としては「悪くない」というかんじ。企画としては面白いと思うので、1冊持っててもいいかな、と。各シリーズのファンなら、特に。

「Y」の悲劇 (講談社文庫)
「Y」の悲劇 (講談社文庫)
〔2000年〕
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 かつて存在した「本の虫茶房」というサイトの1996年から2000年の読書メモと、現行サイト「虫の居所」の2002年までの読書メモを再掲載しています。
 現在では捉え方が変わった本もありますが、感想文は誤字の修正など以外ではほぼ当時のまま。
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